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Q. 遺産分割における不動産の評価額や評価方法について解説

2024年2月8日更新


【この記事の内容】

・遺産分割において遺産の評価額を決める必要性について
・遺産分割における不動産の評価額や評価方法の決め方


不動産の評価額が低ければ低いほど、不動産を受け取る相続人は不動産以外にもより多くの遺産を受け取ることができますが、他の人は受け取る遺産が少なくなります。そのため、評価額や評価方法については相続人間の利害が対立しやすく、話し合いが難航したり、合意できないケースも少なくありません。遺産分割における不動産の評価額や評価方法について知ることで、スムーズな話合いをすることが可能になります。

遺産分割では遺産の評価額を決める必要がある

(1) 遺産分割では分割時点の遺産の評価額を決める必要があり、争点となる

遺産分割は分割時に存在する遺産を相続分に応じて分配する手続きであるため、分割時点の遺産の評価額を決める必要があります。そして、評価額は相続人間で利害が大きく対立する要素であるため、重要な争点になることも珍しくありません。

例えば、相続分が2分の1ずつの相続人AとBが、遺産である土地と預貯金2,000万円について遺産分割を行うケースでAが土地の取得を希望している場合を考えてみましょう。土地の評価額が2,000万円であれば、Aが土地を取得し、Bが預貯金2,000万円を取得することで遺産分割が成立します。もし、土地の評価額が1,000万円であれば、Aは土地以外に預貯金500万円を取得し、Bは預貯金1,500万円を取得することで遺産分割が成立しますので、Aにとっては不動産の評価額が低い方が、Bにとっては評価額が高い方が望ましいということになります。

このように、遺産の評価額によって受け取れる遺産の内容が変わるため、遺産の評価額は重要です。なお、不動産を売却して代金を分ける場合や、相続人で共有して分ける場合のように遺産の評価が不要なケースもあります。

(2) 特別受益や寄与分を考慮して相続する割合(具体的相続分)を算出するには、相続開始時の評価額を決める必要がある

少し分かりにくい話になりますが、上記の通り分割時の不動産評価額を決めるのとは別途、特別受益や寄与分がある場合は、遺産、特別受益、寄与分の相続開始時の不動産の評価額に基づき各相続人の相続する割合(具体的相続分)を算出します。

もっとも、分割時点と相続開始時点それぞれの評価額を決めるより、分割時点の一時点のみの評価額に基づいて遺産分割を進めた方が簡便でスムーズに話し合いが進むことが多く、特別受益や寄与分がある場合でも、当事者に異議がなければ、分割時の評価額のみに基づいて遺産分割を成立させることが多いでしょう。

(関連記事)「Q. 遺産分割における特別受益とは?特別受益の具体例を解説

不動産の評価方法

遺産分割における不動産の評価方法を解説する前に、不動産の評価方法全般について簡単にご紹介します。

・公示価格
国土交通省が選んだ標準地の毎年1月1日時点の1㎡当たりの価格です。
土地の取引価格の指標になりますが、時価と異なる価格になる場合もあります。

・固定資産税評価額
固定資産税や相続税の計算などに使われる評価方法です。
公示価格の7割を目安に決められており、固定資産税課税明細書などに記載されています。

・路線価
主要な道路に面する土地の1㎡当たりの単価のことです。
土地の相続税の計算などに使われており、公示価格の8割程度を目安に設定されています。

・基準地価
各都道府県が選んだ標準地の毎年7月1日時点の1㎡当たりの価格です。
公示地価の補完的な指標と言われています。

・時価
実際に取引が成立する価格のことです。時価の資料としては不動産鑑定士の鑑定書や、不動産業者の簡易な査定書などがあります。

遺産分割では評価額や評価方法を合意で決めることができる

相続税の申告とは異なり、遺産分割では決まった評価方法がある訳ではありません。評価額や評価方法を合意で決めることができます。評価方法について合意した場合は、その評価方法に基づいて評価額を算定します。

評価額や評価方法について合意できなかった場合

合意できなかった場合どうなるのかということも踏まえて評価額や評価方法を検討することが大切です。そのため、まずは合意できなかった場合について解説し、その後に評価額や評価方法の話し合いの方法について解説します。

(1) 合意できなかった場合は裁判所が評価額を認定する

評価額や評価方法について最後まで合意できなかった場合、相続人間の遺産分割協議では解決できないことになりますので、遺産分割調停や遺産分割審判において解決することになります。そして、遺産分割調停・審判においても当事者間で不動産の評価額・評価方法について合意が出来ない場合は、裁判所が評価額を認定することになります。

(2) 裁判所が評価額を認定する方法

原則として、裁判所が選任した鑑定人による鑑定を実施し、鑑定に基づき裁判所が評価額を認定します。ただし実務上、鑑定は当事者が数十万以上の費用を予納しないとできません。

なお、鑑定の仕方は十分に考慮する必要があります。例えば、複数の土地がある場合、まとまった土地として鑑定するのか、個別の土地として鑑定するのか、分筆することを前提に鑑定するのかでは、それぞれ鑑定額が異なります。また、当事者が望まない分割方法で鑑定してしまうと、適切な遺産分割は困難になってしまいます。

鑑定費用の負担

鑑定費用を遺産の現金や預金から支出する、法定相続分の割合で各相続人が負担するといった合意ができる場合は問題ありません。しかし、合意できない場合はどうすればよいでしょうか。

合意できなかったが、それでも鑑定をしたいという場合は、鑑定をしたい当事者が鑑定費用を全額予納することになります。後で鑑定費用の負担割合について合意するか、裁判所が負担割合を決めます。

評価額や評価方法の話し合いをする方法

上記の通り、当事者間で不動産の評価額・評価方法について合意できない場合は裁判所において鑑定を実施することになりますが、実務上多くのケースでは、遺産分割協議・調停・審判のいずれにおいても当事者の合意により不動産の評価額・評価方法を決定しています。遺産分割で評価額や評価方法について話し合いをする一般的な流れは以下の通りです。

① 各当事者が、不動産会社が作成した査定書や、固定資産税評価額、路線価、公示価格、基準地価などに基づき、評価額や評価方法について主張する。

まずは各当事者が評価額や評価方法について主張します。

なお、裁判所における鑑定ではなく、当事者が私的に依頼した不動産鑑定士による鑑定が利用されることはほとんどありません。数十万円以上の費用がかかる上、遺産分割協議が成立せずに遺産分割調停・審判に移行した場合に、一方当事者が提出した鑑定(私的鑑定)を裁判所が採用してくれるわけではないためです。

② ①の主張を踏まえて、評価額や評価方法の合意を目指して話し合いをする。

鑑定をせずに合意した場合のメリットやデメリットと、合意できずに鑑定した場合のメリットやデメリットを考慮した上で、どのような評価額や評価方法であれば合意できるか検討すると良いでしょう。

鑑定をせずに合意した場合のメリットとしては、早期に解決できる、当事者間の関係がこじれにくいといったものが考えられます。特に、早期に解決することで、遺産分割が成立しないことで生じる以下のような問題を回避できます。

  • 遺産分割ができない間に共有者が亡くなり、新たな相続人が登場し、共有関係が複雑になってしまう
  • 不動産を売却したいと思っても、共有者の誰かが反対して売却できない
  • 相続税の申告において配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が利用できない

鑑定をせずに合意した場合のデメリットとしては、時価と離れた評価額で遺産分割してしまうリスクが考えられます。鑑定以外の評価方法は鑑定と比べると適切な時価を算出できないリスクが高いためです。不動産によっては何百万、何千万の違いになる場合もあります。

そのため、特に重要な不動産は鑑定して、その他の不動産は鑑定以外の評価方法で合意するといったことも考えられます。

鑑定した場合のメリットとしては、合意した場合のデメリットの裏返しとして、時価に基づく遺産分割ができる可能性が高いといったものが考えられます。また、鑑定した場合のデメリットとしては、鑑定費用がかかる費用負担で揉めるリスクがある、合意した場合と比べて解決まで時間がかかるといったものが考えられます。

合意した場合のメリットやデメリット、鑑定した場合のメリットやデメリットを踏まえてどのような評価額や評価方法で合意すべきか適切に判断するには専門的な知見に基づくアドバイスが必要です。遺産分割について弁護士に依頼するメリットの一つといえます。

まとめ

以上、遺産分割における不動産の評価額の合意の必要性、裁判所における鑑定、評価額の合意の進め方について解説いたしました。遺産分割において不動産の評価額は大きな争点の一つになりますので、遺産分割協議を進める前に弁護士に相談することをお勧めいたします。

※遺産分割に関する相談をご希望の方は「遺産分割協議・調停・審判」をご覧ください。

【記事監修者】

白土文也法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

当事務所が最も注力する分野は遺産相続問題です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、相続放棄、遺言書作成、家族信託、事業承継など遺産相続に関わる問題全般に対応しております。
相談件数の半分以上を相続問題が占めており、所属弁護士5名全員が、日々、相続に関して研鑽を積んでおります。是非、ご相談ください。  
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