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Q. 法定相続人がいない場合(相続人不存在の場合)の相続財産の行方と手続きについて解説

2024年1月13日更新


【この記事の内容】

・相続人がいない場合の相続財産の行方と手続きについて
・相続人がいない場合は生前対策がお勧め


被相続人(亡くなった方)に相続人がいない場合、内縁の配偶者は財産を取得することが出来るのでしょうか?また、被相続人に対してお金を貸していた人(債権者)は債権を回収できるのでしょうか?この記事では相続人がいない場合の相続財産の行方や手続きについて解説いたします。

相続人がいない場合(相続人不存在)の具体例

そもそも、相続人がいない場合とはどのような場合でしょうか。以下のような場合、相続人がいない場合にあたり、相続人不存在の場合の手続きをとることができます。

・戸籍上相続人が誰もいない場合

戸籍上相続人が誰もいない場合は相続人不存在にあたります。なお、内縁の配偶者は相続人ではないので注意が必要です。また、包括受遺者は法律上相続人と同一に扱われるため、相続財産全てを包括遺贈する旨の遺言書がある場合は相続人不存在にはあたりません。

(関連記事)「Q. 内縁の妻や夫(配偶者)は相続できるのか?【事実婚の相続に関する権利を解説】

・相続人全員が相続放棄・相続欠格・相続廃除のいずれかにあたる場合

相続放棄をすると初めから相続人にならなかったものとみなされ、欠格事由を有する者や廃除された者は相続人になることができません。そのため、戸籍上の相続人全員が相続放棄・相続欠格・相続廃除のいずれかにあたる場合は、戸籍上相続人がいても相続人不存在にあたります。

相続人不存在の場合の相続財産の行方

では、相続人不存在にあたる場合、相続財産はどのような扱いになるのでしょうか。

(1) 相続財産の法人化

まず、相続人の存在が明らかでない場合、相続財産は法人化します。法人化した相続財産は相続財産の管理・清算という目的の限りで相続人と同様の法的地位を有することになります。

(2) 被相続人に対して債権を有していた方(相続債権者)がいる場合

相続人がいない場合の手続きの中で相続債権者への弁済がなされます。

(3) 遺贈を受けた方(受遺者)がいる場合

相続債権者への弁済がなされた後、受遺者に対して弁済がなされます。

(4) 特別縁故者がいる場合

相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算後に残っている相続財産がある場合、特別縁故者は家庭裁判所に相続財産の分与を請求することができます。請求が認められた場合、特別縁故者は財産の分与を受けることができます。内縁の配偶者は特別縁故者になり得る代表例です。

(5) 共有者がいる相続財産がある場合

相続債権者や受遺者に対する清算や特別縁故者に対する財産分与の手続きの後に残っている相続財産について共有者がいる場合、その財産に関する被相続人の持分は原則として他の共有者に帰属します(最高裁平成元年11月24日)。例えば、AとBが共有している不動産がある場合において、Bが死亡し、相続人不存在だった場合、裁判所の手続きの中でその不動産のBの持分が相続債権者・受遺者に対する弁済や特別縁故者への財産分与の対象とならなかったときは、Bの持分は共有者であるAに帰属することになります。

(6) 国庫帰属

最後まで残った相続財産は国庫に帰属します。

相続人不存在の場合の具体的な手続き

ここでは、上記で解説した相続財産の弁済・分与の具体的な手続きの具体的な流れについて説明いたします。

(1) 相続財産清算人の選任申立て

利害関係人や検察官は家庭裁判所に相続財産を管理・清算する者(相続財産清算人)の選任申立てを行うことができます。申立てには予納金が必要となる場合も多く、予納金が余らなかった場合は戻ってこないため注意が必要です。

(2) 家庭裁判所による公告

家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて、相続財産清算人を選任したことや、相続人は期間内に権利を主張すべき旨の公告をします。なお、公告期間内に権利主張する相続人がいない場合は、相続人がいないことが確定します。

(3) 相続財産清算人による公告・催告

相続財産清算人は、2か月以上かつ家庭裁判所の公告期間内の期間を定めて、相続債権者や受遺者に対し請求の申出をすべき旨の公告をします。相続財産清算人が認識している相続債権者や受遺者には個別に催告もします。

(4) 相続債権者への弁済

相続財産清算人は、公告期間終了後、期間内に申出をした相続債権者や相続財産清算人に知れている相続債権者に弁済します。

(5) 受遺者への弁済

相続財産清算人は、相続債権者に弁済した後、受遺者に弁済します。

(6) 特別縁故者への相続財産の分与

家庭裁判所の公告の期間終了後3か月以内に特別縁故者が申し立てをし、財産の分与が認められた場合、その範囲で相続財産が分与されます。

(7) 共有者や国庫への帰属

残っている相続財産に共有者がいる場合、原則として共有者に帰属します。共有者がいない場合は国庫に帰属します。

相続人不存在の場合の生前対策

相続人がいない場合の手続きは、相続財産から手続費用や相続財産清算人の報酬などが支出される上、予納金が必要なケースもありますし、時間もかかります。できればこのような手続きを経ることなく、内縁の妻や親しい友人などに財産を残したいところです。

(1) 遺言書の作成

遺言書で遺贈することで、相続人がいない場合でも、裁判所の手続きを経ずに財産を渡すことが可能です。ただし、相続財産清算人が選任されると、相続財産清算人と遺言執行者の権限の競合という厄介な問題が生じます。相続財産清算人が選任されないようにするために、相続財産清算人が管理すべき財産がないようにマイナスの財産を含めた全ての財産の遺贈を行うと良いでしょう。
例えば、全ての財産をAに包括して遺贈するといったものや、特定の不動産をAに遺贈し、残りの財産をすべて包括してBに遺贈するといった遺贈が考えられます。

遺贈する相手としては、内縁の配偶者や親しい友人、公益法人などが考えられます。特に公益法人などに遺贈することは、遺贈寄付として最近流行しており、件数も増えています。なお、遺贈は放棄することができるため、遺贈する相手が遺贈を受けてくれるか事前に確認するようにしましょう。

遺言書で遺言執行者を定めていない場合、遺言執行者の選任申し立てをする必要があり、手間がかかります。遺言書で遺言執行者を定めておくと良いでしょう。

遺言書を作成する際には上記以外にも様々な注意点があるため、弁護士にご相談ください。

※遺言書の作成に関する相談をご希望の方は「遺言書作成」をご覧ください。

(2) 生前贈与

生前贈与をすることで、相続人がいない場合の手続きによらずに、財産を承継させることができます。ただし、生前贈与をすると生前に財産が移転するため、老後の資金が足りなくなるといったリスクがあるため注意が必要です。

(3) 養子縁組

養子縁組をすると、養子となった方が相続人になるため、相続人不存在の対策になります。ただし、養子との間に法律上の親子関係が成立することに注意が必要です。

まとめ

この記事では、相続人がいない場合の具体例、相続財産の行方、具体的な手続き、そして、生前の対策について解説いたしました。相続人はいないものの財産を確実に渡したい相手がいる場合は、弁護士に相談することをお勧めします。


【記事監修者】

白土文也法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

当事務所が最も注力する分野は遺産相続問題です。
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