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Q. 遺留分を渡さなくていい方法?遺留分対策について8つの具体的方法を弁護士が解説

2024年1月9日更新


【この記事の内容】

・遺留分対策の必要性
・遺留分対策の具体的な手法


会社を継いでもらいたい、先祖代々の土地を特定の相続人に継いでもらいたいといった場合、生前贈与や遺言により特定の相続人に財産を承継させる必要があります。しかし、相続対策により遺留分を侵害した場合、遺留分侵害額請求をされるおそれがあり、相続対策によってかえって相続争いになるリスクがあります。

また、遺留分侵害額請求をされると、侵害額に相当する金銭を支払うために、承継した会社の自社株や事業用資産、先祖代々の土地を売却しなければならない場合があり、相続対策をした意味がなくなってしまうこともあります。

遺留分対策は、相続対策を意味のあるものにするとともに相続争いを回避するために必要です。

遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が相続できる最低限の取り分のことです。遺留分制度は、被相続人の死後の相続人の生活を保障するためなどを理由として設けられた制度です。具体的な遺留分の額は、遺留分算定の基礎財産×各相続人の遺留分割合で算定されます。

法定相続人の種類と遺留分割合

主な相続人の遺留分割合は以下の表の通りです。

相続人遺留分割合
配偶者のみが相続人の場合配偶者:2分の1
子のみ子:2分の1
直系尊属(父母など)のみ直系尊属:3分の1
兄弟姉妹無し
配偶者と子配偶者:4分の1 子:4分の1
配偶者と直系尊属配偶者:6分の2 直系尊属:6分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者:2分の1 兄弟姉妹:無し

なお、子が複数いる場合は更に子の人数で割ります。例えば相続人が配偶者、子A、子Bの3人の場合、遺留分割合は配偶者が4分の1、子Aが8分の1、子Bが8分の1になります。父母が複数いる場合も同様です。

遺留分対策の考え方

遺留分対策には以下の4種類の考え方があります。

  • 遺留分権利者でなくする
  • 遺留分算定の基礎財産を減らす
  • 遺留分割合を減らす
  • 遺言書の付言事項として思いを書く

以下では、それぞれどのような方法か具体的に紹介いたします。

遺留分権利者でなくする方法

遺留分権利者でなくする方法として、①遺留分の生前放棄と、②廃除があります。

遺留分の生前放棄には家庭裁判所の許可が必要です。放棄が認められれば確実な方法ですが、推定相続人自ら家庭裁判所に申立てをしなければならない上、遺留分放棄に対する代償が必要であるなど一定のハードルがある手続きです。

②廃除の制度は、推定相続人が被相続人に虐待や重大な侮辱をするか、推定相続人に著しい非行がないと使えないため、使用できる場面が限られます。また、廃除の効果は対象となった人のみに及びます。そのため、廃除された方に子がいた場合は、廃除された方の子が代襲相続をすることになり、その子は遺留分を有することになります。

遺留分算定の基礎財産を減らす方法

遺留分算定の基礎財産が減ると、同じ遺留分割合でも具体的な遺留分の額が小さくなるため、遺留分対策になります。以下では、遺留分算定の基礎財産を減らす具体的な方法をご紹介します。

(1)相続人への生前贈与(相続開始の10年以上前)

相続開始より10年以上前の相続人への生前贈与は、原則として遺留分算定の基礎財産に含まれません。ただし、人はいつ亡くなるか分からないため、亡くなるタイミングによっては遺留分算定の基礎財産に含まれるリスクがあります。また、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、10年以上前の生前贈与も遺留分算定の基礎財産に含まれるというリスクがあります。

(2)相続人以外(子がいる場合の孫など)への生前贈与(相続開始より 1 年以上前)

相続開始より1年以上前の相続人以外への生前贈与は、原則として遺留分算定の基礎財産に含まれません。ただし、相続人への生前贈与と同様のリスクがあります。また、例えば、形式的には孫への贈与でも、実質的には相続人である子への贈与と認められる場合には、相続人である子への特別受益とされる可能性もゼロではありません。

(3)生命保険の活用

受取人に被相続人以外の者が指定されている場合、生命保険金請求権は保険金受取人固有の権利であるため、遺留分算定の基礎財産に含まれません。この仕組みを利用して遺留分対策を行うことが可能です。

ただし、受取人が相続人の場合、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」(最二小決平成16年10月29日)は、特別受益に準じて持ち戻しの対象となるとされています。この判例は遺留分侵害額請求ではなく遺産分割に関するものでしたが、遺留分算定の基礎財産に含まれる可能性がありえるので要注意です。

(関連記事)「Q. 【裁判例の紹介】生命保険金(死亡保険金)は遺産分割の特別受益に該当するのか?

(4)経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例(除外合意・固定合意)の活用

相続人全員の合意に基づき、後継者に贈与等された自社株式や事業用資産について、遺留分算定の基礎財産から除外(除外合意)したり、遺留分算定の基礎財産に算入する額を合意時の時価に固定する(固定合意)することが可能です。事業承継対策をとして用いられています。

※事業承継対策の相談をご希望の方はこちらのページをご覧ください。

遺留分割合を減らす方法

遺留分算定の基礎財産が同じでも遺留分割合が小さくなれば具体的な遺留分の額が小さくなります

例えば、相続人に子A、子Bがいる場合に子Aの子と養子縁組をすると、子Aの子に遺留分が認められ、その分子Aと子Bの遺留割合が小さくなります。

養子縁組前の遺留分割合子A:4分の1 子B:4分の1
養子縁組後の遺留分割合子A:6分の1 子Aの子:6分の1 子B:6分の1

なお、養子縁組が単に他の目的を達するための便法として使われたに過ぎない場合は養子縁組をする意思がないとされ、養子縁組が無効になる可能性がある(最判昭和23年12月23日参照)ため注意が必要です。

付言事項

付言事項は、被相続人の想いを記載する事項であり、法的効力はありません。法的効力は無いため、付言事項に遺留分侵害額請求をしないで欲しいと記載しても、相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。もっとも、付言事項は遺言者の想いを伝えることで、遺留分侵害額請求の自粛を期待する手法であり一定の効果が期待できます。

例えば、配偶者に多くの財産を相続させる場合、付言事項として以下の【参考例】のような記載をすることが考えられます。

【参考例】

「妻に老後を過ごすために必要な自宅と〇銀行の預金を相続させます。子どもたちが相続する財産は少なくなりますが、妻が老後を安心して過ごせるように遺留分の請求はしないようにお願いします。」

遺留分対策のまとめ

この記事では、遺留分対策について解説いたしました。特に、会社のオーナー社長の事業承継対策、不動産オーナー様の相続対策には遺留分対策が不可欠です。事業承継対策においては節税を意識する一方、遺留分対策が疎かになっている方が多い印象です。紛争になってしまっては対策した意味が無くなってしまいます。遺留分対策については是非弁護士にご相談下さい。

※遺言書の作成に関する相談をご希望の方は「遺言書作成」をご覧ください。
※事業承継対策の相談をご希望の方は「事業承継対策」をご覧ください。
※遺留分に関する詳しい解説は遺留分侵害Q&Aをご参照ください。

【記事監修者】

白土文也法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

当事務所が最も注力する分野は遺産相続問題です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、相続放棄、遺言書作成、家族信託、事業承継など遺産相続に関わる問題全般に対応しております。
相談件数の半分以上を相続問題が占めており、所属弁護士5名全員が、日々、相続に関して研鑽を積んでおります。是非、ご相談ください。  
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