遺産相続問題に関するよくある質問や、相続に関する基礎知識・豆知識、判例などをQ&A方式でご紹介いたします。
Q. 遺産相続の手続きに時効や期限はありますか?
更新日:2023年4月11日
相続は誰もが経験することですが、何度も経験することではなく、何をいつまでにすべきか知らない方がほとんどではないでしょうか。また、法律・税金・登記など専門的な知識が無いと対応できないことも多くあります。このように多くの方にとって不慣れな相続手続きですが、日々の生活や仕事があり、忙しさのあまりあっという間に時間が過ぎていくのが現実です。
しかし、期限を過ぎるとペナルティを課されることもありますので、粛々と進める必要があります。この記事では、どのような相続手続きをいつまでに行うべきか解説いたします。
遺産分割協議の期限
被相続人が死亡して相続が開始すると、相続人たちの間で相続財産をどのように分け合うかを決める遺産分割協議を行うことになります(※)。この遺産分割協議自体には法律上の期限はありません。したがって、相続開始から何年も経過した後であっても、遺産分割協議を行うことが可能です。ただし、後述する不動産登記制度や税制上のメリットとの関係、そして改正相続法について注意する必要があります。
※遺言書が作成されていた場合は、原則として、遺言書の内容に従って財産を承継することになります。遺言書が無い場合、又は、遺言書はあるけど、全ての財産について記載されていない場合は、遺産分割協議が必要となります。
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相続放棄・限定承認の期限
相続放棄とは、被相続人の一切の相続財産(資産だけでなく負債も)の承継を放棄することをいいます。また、限定承認とは、被相続人の相続財産を承継するものの、相続した債務については、相続した財産の範囲内でのみ弁済し、それ以上の責任を負わないようにする方法をいいます。
相続放棄や限定承認をする場合、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。この3か月の期間を熟慮期間といいます。なお、「相続の開始があったことを知った時」とは、一般的には、相続人が被相続人の死亡の事実を知った時となります。何も手続きをせずに熟慮期間を経過した場合、その後に相続放棄や限定承認をすることができなくなります。
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遺留分侵害額請求の期限
遺留分とは、相続財産のうち相続人が必ず相続することができる最低限の権利をいいます。遺留分が侵害される場合、遺留分を有する相続人は遺留分を侵害する者に対して、遺留分侵害額に相当する価値を金銭で請求することができます。
遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分の侵害があることを知った時から1年以内にする必要があります。また、遺留分の侵害のあることを知らなかったとしても、相続の開始から10年を経過すると、遺留分侵害額請求はできなくなります。
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準確定申告の期限
被相続人が死亡した年に被相続人が支払うべき所得税について、相続人が被相続人の代わりに申告・納税することを準確定申告といいます。準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
相続税申告の期限
相続税の申告・納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内にする必要があります。この期間を超えると無申告加算税や延滞税等が課されることになります。また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを利用できないというデメリットがあります。遺産分割協議が10か月以内にまとまらず、相続税申告ができなかった場合には、このようなデメリットがあることに注意が必要です。
(参照)国税庁HP「相続税の申告手続」 |
相続登記の期限
被相続人から相続した不動産の名義を、被相続人から相続人の名義に変更する手続きを相続登記といいます。現在、相続登記に申請義務はありませんが、不動産登記法改正により、2024年4月以降、相続登記の申請が義務づけられます。具体的には、相続が開始し、不動産の相続があったことを知った時から3年以内に相続登記をする必要があります。正当な理由なくこれに反すると、10万円以下の過料が科されます。なお、遺産分割協議が3年以内にまとまらない場合、相続人であることを登記官に申告する相続人申告登記の手続をとることで、相続登記の申請義務を果たすことが可能です。この手続きは、相続人が1人で行うことができます。
改正相続法について
寄与分や特別受益に関する新たなルールが2023年4月1日から施行されました。寄与分とは、ある相続人が被相続人の財産の形成・維持に貢献した場合に、その相続人の相続する財産を法定相続分よりも多くする制度をいいます。また、特別受益とは、ある相続人が被相続人から特別の財産的利益を受けている場合に、その相続人の相続する財産を法定相続分よりも少なくする制度をいいます。
改正法では、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割について、一定の場合を除き、寄与分・特別受益の主張ができなくなります。すなわち、裁判所は、寄与分・特別受益を考慮せず、法定相続分や被相続人が指定した指定相続分に従って判断をすることになります。寄与分や特別受益の主張により多くの財産を得ることができる相続人にとっては、相続開始から10年を経過した後の遺産分割で不利益を受けるおそれがあるため、注意が必要です。なお、10年経過後でも、相続人全員の合意があれば、寄与分・特別受益の考慮をすることは可能です。
(関連記事)「Q. 遺産分割における特別受益とは?特別受益の具体例を解説」 |
【記事監修者】 弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや) 第二東京弁護士会所属 中央大学法学部法律学科卒業 【代表弁護士白土文也の活動実績】 ・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信) ・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師 ・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇 その他、取材・講演多数 弁護士のプロフィールはこちら |
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