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Q. 遺産分割協議のやり直しは可能か?無効・取消しのケースや贈与税などの注意点について解説
2024年11月28日更新
【記事監修者】 弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや) 第二東京弁護士会所属 中央大学法学部法律学科卒業 【代表弁護士白土文也の活動実績】 ・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信) ・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師 ・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇 その他、取材・講演多数 弁護士のプロフィールはこちら |
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【この記事の内容】 ・原則として遺産分割協議のやり直しは出来ない ・相続人全員の合意による遺産分割協議のやり直しは可能 ・遺産分割協議をやり直さなければならない主なケース |
遺産分割協議をした後に、遺産分割協議に問題があることに気づくことがあります。例えば、思わぬ税負担となる場合や相続人が漏れていたといった場合に遺産分割協議をやり直すことは可能なのでしょうか。この記事では、遺産分割協議のやり直しの可否や要否、注意点、具体的な手続きの流れについて解説します。
原則として遺産分割協議のやり直しは出来ない
遺産分割協議は相続人全員の合意により行われるものであり、相続人の一人が、既に成立した有効な遺産分割協議のやり直しを希望したとしても、原則としてやり直しは出来ません。
もっとも、以下で解説する通り、相続人全員による遺産分割協議のやり直しや、遺産分割協議が無効でるためやり直しが認められるケースもあります。
相続人全員の合意による遺産分割協議のやり直しは可能
有効な遺産分割協議であっても相続人全員で合意してやり直すことは可能です。もっとも、相続人全員で合意して遺産分割協議をやり直すことにより法律関係が混乱するリスクや税務上のリスクがあるため、やり直す場合には慎重な判断が必要です。
例えば、有効な遺産分割協議を相続人全員の合意によってやり直した場合、一般的には当初の遺産分割により取得した財産について贈与や交換をしたものと扱われる旨の国税局の回答があります(平成22年3月2日名古屋国税局文書回答事例別紙の3(3))。当初の遺産分割協議に基づき相続税が課税された上、やりなおした遺産分割協議に基づき贈与税や譲渡所得税が課税されてしまう場合があるため注意が必要です。
遺産分割協議をやり直す必要がある主なケース
一方で、遺産分割協議が無効な場合には遺産分割協議をやり直す必要があります。遺産分割協議をやり直さなければならない主なケースは以下の通りです。
- 遺産分割の当事者に漏れがあった
- 遺産分割の当事者以外の者が参加した
例えば、本来は被相続人の兄弟が相続人になるケースにおいて戸籍上は被相続人の子ではあるものの真実は子でない者が遺産分割協議に参加した結果、被相続人の兄弟が遺産分割協議に参加できなかった場合などが考えられます。 - 判断能力が無い人が参加していた
- 利益が相反する人が参加していた(未成年者と親権者など)
- 遺産分割協議の内容を認識していない当事者がいた
当初の遺産分割による財産の取得について無効又は取消し得べき原因がある場合、分割のやり直しはまだ(当初の)遺産の分割の範疇(はんちゅう)として考えるべきという旨の国税局の回答があります(平成22年3月2日名古屋国税局文書回答事例別紙の3(3))。当初の遺産分割が無効な場合には、当初の遺産分割ではなく、やり直した遺産分割協議に基づき相続税が課税されることになります。
遺産分割協議の取消しが認められる主なケース
遺産分割協議が取り消されたされた場合も遺産分割協議をやり直す必要があります。
遺産分割協議の取消しが認められる主なケースは以下の通りです。
- 錯誤・詐欺による遺産分割協議(相続財産を隠されていた、虚偽の説明を受けていたなど)
なお、予想外の税負担があった場合に、原則として錯誤は認められないとしつつ、例外的に錯誤を認めた裁判例(東京地裁平成21年2月27日判決)もあります。 - 未成年者が親権者の同意を得ずに遺産分割協議
- 成年被後見人が遺産分割協議
- 被保佐人が保佐人の同意を得ずに遺産分割協議
- 被補助人が補助人の同意が必要な場合に同意を得ずに遺産分割協議
- 後見監督人がいるのに、後見人が後見監督人の同意を得ずに被後見人に代わって遺産分割協議
- 脅迫による遺産分割協議
無効の場合と同様、当初の遺産分割に基づく課税はされず、やり直した遺産分割協議に基づき相続税が課税されることになります。
当初の遺産分割協議後に第三者に遺産が譲渡されていた場合
遺産分割が無効又は取消しになるケースであっても、形式的には遺産分割が成立しているため、例えば、不動産について相続登記がなされた上で第三者に対して売却されてしまうこともあります。この場合、遺産分割協議をやり直したとしても、第三者に譲渡された遺産を取り戻せない場合があります。遺産分割をやり直す場合には、取り戻すことができない財産の有無をしっかりと確認した上で、取り戻せない遺産が新たに生じないうちにやり直すべきでしょう。
遺産分割協議のやり直しの具体的な手続き
(1) 無効取消の理由がない場合
相続人全員の合意による遺産分割協議のやり直しができないか相続人間で協議します。
やり直しについて合意が得られない場合には、遺産分割協議のやり直しはできません。
(2) 無効・取消しの理由がある場合
無効や取消事由があることを相続人に伝え、相続人間で再度の遺産分割協議を行います。再度の遺産分割協議がまとまらなかった場合の一般的な手続きの流れは以下の通りです。
ア 当初の遺産分割協議の無効や取消しについて争いがない場合
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、再度の遺産分割について協議します。調停でも協議がまとまらなかった場合には遺産分割について審判がなされます。
イ 当初の遺産分割協議の無効や取消しについて争いがある場合
相続人間で遺産分割協議の無効や取消しについて合意ができる余地がある場合には、いきなり訴訟提起するのではなく、家庭裁判所に対して家事調停を申し立てることが考えられます。その上で、家事調停において遺産分割協議の無効や取消しについて合意ができない場合には、地方裁判所に対して遺産分割協議の無効確認訴訟を提起します。遺産分割協議の無効を認める確定判決を得た後に、改めて遺産分割手続(協議・調停・審判)を行うことになります。
もっとも、遺産分割協議の無効や取消しについて争いがある場合には、遺産分割協議の無効や取消について合意ができる余地がない場合も少なくありません。このような場合には、家事調停は申し立てずに初めから地方裁判所に対して遺産分割協議の無効確認訴訟を提起することもあるでしょう。
以上、遺産分割協議のやり直しについて解説いたしました。遺産分割協議のやり直しについても様々なケースがあり、それぞれについて法律上・税務上のリスクがありますので、相続人同士で安易にやり直すべきではありません。遺産分割協議のやり直しについてお悩みの方は弁護士に相談することをお勧めいたします。
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