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Q. 遺言書が無効になる場合とは?遺言書の効力がない場合や、遺言書の効力がないことを主張する方法について解説

2024年10月9日更新

相続問題
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【この記事の内容】

・遺言書が無効になる場合

・遺言書を取り消すことができる場合
遺言書の撤回
・遺言書の効力がないことを主張する方法や注意点

遺言書が作成されていても、実は遺言書の効力がないという場合があります。遺言書の効力がないと遺言書通りに財産を承継させることができなくなってしまいます。遺言書の効力がない場合について知っておくことは、遺言書を作成する方だけでなく遺言書の内容に納得できない方にとっても重要です。この記事では、遺言書の効力がない具体的なケースについて解説した上で、遺言書の効力がないことを主張する方法についても解説いたします。

なお、遺言書の内容に納得できない場合には、①遺言書と異なる遺産分割協議をする、②遺留分侵害額請求を行うという方法もあります。これらについて詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。

(関連記事)「Q. 遺言書がある場合の遺産分割協議
(関連記事)「Q. 相続における遺留分侵害額の計算方法とは?

方式に不備がある遺言書

民法で定められている方式に不備がある遺言書は無効で効力がありません。方式は遺言書の形式ごとに異なります。この記事では作成されることが多い自筆証書遺言と公正証書遺言の方式について解説いたします。

自筆証書遺言の方式

自筆証書遺言は遺言者が全文、日付、氏名を自書し押印することが必要です。なお、相続法の改正により相続財産の目録については自書の代わりに目録の各ページに署名押印をすることが可能になりました。

また、遺言書を訂正する場合には、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に押印して行う必要があります。例えば、訂正箇所に二重線を引き押印した上で、変更した箇所・変更する内容の記載・署名を行うことで訂正することができます(ただし、この厳格な訂正方法を誤ると訂正が無効になるため、実務的には遺言書自体を作成し直すことが多い状況です。)。

自筆証書遺言方式不備の具体例

自筆証書遺言の方式不備の具体例としては以下のようなものがあります。

  • パソコンで遺言書を作成した場合や他人が代筆した場合
    自書したといえず方式不備になります。
  • 添え手による補助を受けた場合
    原則として自書したといえず方式不備になります。
  • 平成元年1月吉日と記載した場合
    暦上の特定の日付を表示できておらず方式不備になります。

公正証書遺言の方式

公正証書遺言の方式は以下の通りです。

  • ①証人2人以上の立ち合いの下
  • ②遺言者が遺言の趣旨を口頭で伝え
  • ③公証人が遺言者が口頭で伝えたことを筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧させる
  • ④遺言者と証人が筆記の正確なことを承認した後、各自が署名・押印
  • ⑤公証人が上記方式に従って作ったものである旨を付記し、署名・押印

なお、①未成年者、②推定相続人、③受遺者、④推定相続人や受遺者の配偶者、⑤推定相続人や受遺者の直系血族などは、証人になれません。また、口頭で伝えること、読み聞かせを聞くこと、署名をすることができない場合には特則で代替手段が定められています。

公正証書遺言の方式不備の具体例

公正証書遺言の方式不備の具体例としては以下のようなものがあります。

  • 遺言者がうなづくだけで一言も喋らなかった場合
    遺言の趣旨を口頭で伝えておらず方式不備になります。
  • 遺言者が署名するのに特に支障がないのに、公証人が署名を代行した場合
    遺言者が署名できない場合にあたらず方式不備と判断した裁判例があります。

遺言能力がない状態で作成された遺言書

遺言時に遺言能力(遺言の内容を判断する能力)がない場合、遺言は無効で効力がありません。遺言能力の有無は具体的な事情を総合的に考慮して判断されますが、東京地裁平成16年7月7日判決が着目すべき要素について以下の通り示しています。


【東京地裁平成16年7月7日判決が示した着目すべき要素】

「遺言能力の有無は、遺言の内容、遺言者の年齢、病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移、発病時と遺言時との時間的関係、遺言時と死亡時との時間的間隔、遺言時とその前後の言動及び精神状態、日頃の遺言についての意向、遺言者と受遺者との関係、前の遺言の有無、前の遺言を変更する動機・事情の有無等遺言者の状況を総合的に見て,遺言の時点で遺言事項(遺言の内容)を判断する能力があったか否かによって判定すべきである。

実務上は、東京地裁平成16年7月7日判決が示した要素等を総合的に考慮して遺言能力の有無を判断します。なお、認知症の場合には遺言能力が認められない可能性が高くなりますが、必ず遺言能力が認められないという訳ではありません。

撤回した遺言書

遺言の方式に従って撤回した遺言には効力がありません。例えば、甲土地をAに遺贈する旨の2020年4月1日付の公正証書遺言を作成した後、自筆証書遺言の方式に則って2020年4月1日付の公正証書遺言を撤回した場合、2020年4月1日付の公正証書遺言は効力がありません。

撤回したとみなされる遺言書

以下の行為をすると遺言書を撤回したとみなされます。どのような行為をすると撤回したとみなされるか確認した後、それぞれの行為について解説いたします。

【遺言書を撤回したとみなされる行為】

  • 前の遺言と抵触する遺言書を作成する
  • 遺言後に遺言者が遺言書の内容と抵触する生前処分その他の法律行為をする
  • 遺言者が故意に遺言書や遺贈の目的物を破棄する

前の遺言と抵触する遺言書を作成する

前の遺言と抵触する遺言書を作成すると、前の遺言のうち抵触する部分を撤回したとみなされます。例えば、甲土地をAに相続させる旨の遺言書を作成した後に、甲土地をBに相続させる旨の遺言書を作成した場合には、甲土地をAに相続させる旨の遺言書を撤回したとみなされます。

遺言書を作成した後に遺言書の内容と抵触する生前処分その他の法律行為をする

遺言書を作成した後に遺言者が遺言書の内容と抵触する生前処分その他の法律行為をすると、遺言のうち抵触する部分を撤回したとみなされます。例えば、甲土地をAに遺贈する旨の遺言書を作成した後に、遺言者が甲土地をBに生前贈与した場合には、原則として遺言書のうち甲土地をAに遺贈する部分を撤回したとみなされます。

遺言者が故意に遺言書や遺贈の目的物を破棄する

遺言者が故意に遺言書や遺贈の目的物を破棄すると、破棄された部分が撤回されたとみなされます。例えば最判平成27年11月20日判決は遺言書の文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで一本の斜線を引いた行為について以下の通り判断し、故意に遺言書を破棄したものと認めました。


【最高裁平成27年11月20日判決の判断】

「赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当である」

錯誤・詐欺・脅迫によって作成された遺言書

錯誤・詐欺・脅迫によって作成された遺言は取り消すことができ、取り消すことで初めから無効だったとみなされます。なお、令和2年4月1日以降の遺言書の作成について錯誤がある場合は取消しではなく無効になります。さいたま地裁熊谷支部平成27年3月23日判決は錯誤を認めた裁判例であり、以下のように判断しました。


【さいたま地裁熊谷支部平成27年3月23日判決の判断】

「亡花子が全盲であったことや、当時七九歳と高齢であったこと、法的知識を十分に有していたと認められないことにも照らせば、亡花子が、本件遺言時、亡花子の死亡後、被告が、確実に原告や亡一郎に生活費等を支払ってくれるものとの誤信して本件遺言をしたものと推認できる。」
「原告や亡一郎に生活費等が確実に支払われることが亡花子にとって極めて重要であって、少なくとも被告が、原告と亡一郎に対し生活費等を支払う法的義務を負わない(原告や亡一郎は、被告が支払を拒んだ場合、生活費が必要であっても支払を強制して求めることができず、任意の履行を期待できるにすぎない。)と認識していれば、本件遺言をしなかったと認められる」

公序良俗に反する遺言書

公序良俗に反する遺言は無効で効力がありません。公序良俗に反するかどうかは、具体的な事情に照らして判断されます。例えば、死亡するまで妾として共同生活をすることを条件とした金銭の遺贈が公序良俗に反し無効であるとした大審院の判例があります。他方で、不倫相手に対し財産の3分の1を遺贈したケースについて、様々な事情を考慮した上で公序良俗に反するものとはいえないと判断した判例もあります。

内容が不明確な遺言書

遺言の内容が不明確な場合、法的効果が特定されておらず無効になる場合があります。遺言の解釈については最高裁判所昭和58年3月18日判決が以下の通り示しており、遺言書の記載だけでなく様々な事情を考慮してできる限り遺言の解釈を試みることになります。できる限り遺言の解釈を試みても法的効果が特定されているといえない場合には遺言は無効ということになります。


【最高裁判所昭和58年3月18日判決の判断】

「遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべき」

大阪高裁令和3年11月5日判決は、遺言の解釈を試みた上で遺言は無効であると判断した裁判例です。同裁判例は、本文がいずれも一文であり、「二代目」や「まかせる」という文言が用いられている一方で、「財産」、「遺産」、「相続」等の文言が使用されていない遺言書について、上記判例に従い遺言の解釈を試みましたが、法的効果が特定されていないといわざる得ず無効である旨の判断をしました。

誰かに偽造された遺言書

偽造された遺言書は無効で効力がありません。偽造について判断した裁判例をご紹介します。

【東京地裁平成9年6月24日判決】

カーボン複写で遺言書を作成したケースについて、遺言者の印影が署名から外れた箇所に押印されていること、10行足らずの文章中に「世田ヶ谷」と「世田谷」の2種類の住所表示がされていること、遺言書の特殊な字体が相続人の自筆の陳述書でも使用されていること等の様々な事情を考慮した上で偽造を認めた裁判例です。

【東京高裁平成12年10月26日判決】

筆跡鑑定には、他の証拠に優越する証拠価値が一般的にあるものではないことに留意して、事実の総合的な分析検討をすべきとし、遺言が作成された経緯や内容の合理性等を総合的に考慮した上で、遺言者の自筆(偽造ではない)と判断した裁判例です。

共同で作成された遺言書

二人以上の者が同一の証書で作成した遺言書は無効で効力がありません。夫の遺言部分と妻の遺言部分を容易に切り離すことができる自筆証書遺言について共同遺言にあたらないと判断した判例(最高裁昭和5年10月19日判決)もありますが、遺言書は別々に作成する必要があります。

遺言書に効力がないことを主張する方法

交渉

まずは遺言の効力がないことやその理由を相続人等の遺産分割の当事者に伝え交渉します。当事者間で遺言の効力がないことについて合意できた場合には遺言がなかったものとして遺産分割手続(協議・調停・審判)を行います。

調停

当事者間の話合いでは解決できない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることで裁判所関与の下で合意を目指すことが可能です。もっとも、遺言書の効力の有無について話し合いで解決することが難しいことが多いのも実情です。

訴訟

話し合いでは解決できない場合には、遺言の効力がないことの確認を求める訴えを地方裁判所に提起します。法律上、原則として訴訟の前に調停をすることになっています(調停前置といいます)が、遺言書の有効性は話し合いで合意が成立する可能性が低いことも多く、調停の申立てはせずに訴訟を提起することも少なくありません。

遺言書の効力が認められた場合の進め方

交渉・調停・訴訟の結果、遺言書の効力が認められた場合は、遺言書を前提に相続手続(預金の相続など)や、遺言の対象となっていない遺産の遺産分割手続を行います。遺留分が侵害されている場合には、遺留分についても問題を解決することになります。

遺言書の効力が認められなかった場合の進め方

遺言の効力が認められなかった場合は、遺言書がないものとして遺産分割手続を行うことになります。遺産分割手続きの進め方について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧下さい。

(関連記事)「Q. 遺産分割とは?遺産分割の基本的な流れを解説

遺言の効力を争う際の注意点

遺言の効力を争う際には以下のような点に注意する必要があります。

  • 遺言が無効であることを主張するのに期限や時効はありません。しかし、時間の経過に伴い証拠がなくなったり、関係者の記憶が薄れるといったリスクがあります。
  • 遺留分侵害額請求権は1年以内に行使しないと時効によって消滅します。遺言が有効とされた場合に備えて、仮に遺言書が有効であったとしてもという形で遺留分侵害額請求権を行使しておく必要があります。遺留分の期間制限について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧下さい
  • 遺言書に基づき遺産が処分され回収できなくなるリスクがある場合には保全処分の検討が必要です。
(関連記事)「Q.遺留分を請求する期限とは? 遺留分侵害額請求権や遺留分に相当する金銭の請求権の時効について解説

まとめ

以上、遺言書が無効になる場合を含めた遺言書の効力がない具体的なケースについて解説いたしました。遺言書の効力がないケースは様々である上、遺言書の効力の有無を判断するには遺言能力のように個別のケースに応じた具体的な検討が必要な場合もあります。トラブルを予防しながら遺言書を作成したい方や遺言書の内容に納得できない方は弁護士にご相談下さい。

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【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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