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Q. 遺産相続した賃貸不動産の賃料(家賃収入)は誰のもの?
2025年4月11日更新

【記事監修者】 ![]() 弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや) 第二東京弁護士会所属 中央大学法学部法律学科卒業 【代表弁護士白土文也の活動実績】 ・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信) ・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師 ・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇 その他、取材・講演多数 弁護士のプロフィールはこちら |
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【この記事の内容】 ・発生タイミングごとの賃料の扱い ・敷金に要注意 ・生前対策が重要 |
賃貸不動産(収益物件)を所有している被相続人が亡くなった場合、賃料(家賃収入)がどのように扱われるのかは、被相続人や相続人にとって重要な問題です。この記事では、相続開始前後の賃料の扱いについて具体的に解説していきます。
被相続人が亡くなる前の賃料
被相続人が亡くなる前に支払われていた賃料
被相続人が亡くなる前に被相続人の口座に振り込まれていた賃料は、現金や預貯金として遺産分割の対象になります。そのため、他の相続財産と同様に、遺産分割協議により誰が取得するかを決める必要があります。
亡くなった時点で未払いの賃料
亡くなった時点で未払いの賃料は可分債権として、法律上当然に分割され、各相続人が相続分に応じて承継します(最判昭和29年4月8日)。そのため、未払いの賃料は遺産分割の対象になりません。ただし、相続人全員の合意がある場合には、遺産分割の対象とすることも可能です。各相続人が相続分に応じて承継するとはどういうことなのか、具体的にみていきましょう。例えば、①相続人が配偶者、長男、次男であり、②未払賃料が40万円、③遺言書がない場合の各相続人の相続分と、承継する未払い賃料は下記の通りです。
【相続分】
・配偶者:法定相続分2分の1
・長男:法定相続分4分の1
・次男:法定相続分4分の1
【承継する未払い賃料】
・配偶者:20万円(40万円×2分の1)
・長男:10万円(40万円×4分の1)
・次男:10万円(40万円×4分の1)
被相続人が亡くなった時点で支払われていたか否かで、賃料が遺産分割の対象になるか否かが変わることになります。
被相続人が亡くなってから遺産分割成立までの賃料
被相続人が亡くなってから遺産分割が成立するまでの賃料は、各相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得します(最判平成17年9月8日)。ただし、未払い賃料と同様に相続人全員の合意があれば、遺産分割の対象とすることも可能です。
応用編:被相続人の口座に振り込まれた場合 被相続人が亡くなってから遺産分割が成立するまでの賃料が被相続人の口座に振り込まれた場合には、被相続人が亡くなった後に入金された賃料を含む預貯金債権が遺産分割の対象になるものとして扱われることが多いと考えられています。 |
遺産分割成立後の賃料
遺産分割成立後の賃料は、賃貸不動産を承継した相続人が取得します。賃貸不動産を承継した相続人は、関係者への連絡や手続きも忘れずに行う必要があります。詳しくは後ほど解説いたします。
敷金に要注意
不動産を相続する際に見落としがちなのが「敷金」の扱いです。
遺産分割後に賃借人が退去した場合
まず前提として、遺産分割で賃貸不動産を承継した相続人は賃貸人として敷金返還債務を承継します(大阪高判令和元年12月26日)。そのため、遺産分割後に賃借人が退去した場合、遺産分割で賃貸不動産を承継した相続人が敷金返還債務を履行しなければなりません。
上記裁判例について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。
敷金は見落としやすい
敷金として受け取った金銭に敷金と明記されているわけではありません。そのため、現金や預貯金の形で保管している敷金が敷金とは分かりづらいことがあります。遺産分割で賃貸不動産を承継した相続人は敷金返還債務を承継しますが、敷金として受け取った金銭については当然には承継しません。そのため、遺産に賃貸不動産が含まれている場合には特に注意が必要です。まずは、賃貸借契約書で敷金の有無や額を確認し、敷金がある場合には、賃貸不動産を取得する者が敷金額に相当する現金預貯金を取得するように注意すべきです。
関係者への連絡や手続きも忘れずに
賃貸不動産を承継した相続人は、以下のような関係者への連絡や手続きも忘れずに行う必要があります。
- 賃借人に新しい振込先口座を伝える
- 管理会社に連絡する
物件の管理を委託している管理会社に賃貸不動産を承継したことを伝え、必要に応じて手続きを行います。 - 保険の手続きを行う
火災保険などの内容を確認し、必要に応じて手続きを行います。 - 登記手続きをする
登記手続きをしなければ賃貸人になったことを第三者に主張できません。そのため、賃借人が新しい振込先口座に振り込んでくれないといったリスクが生じます。遺産分割後は速やかに登記手続きを行う必要があります。
生前対策が重要
賃料に関する相続トラブルを防ぐためには、生前から適切な対策を講じることが重要です。
遺言書の活用
例えば、遺言書で賃貸不動産を長男に相続させることで、被相続人が亡くなった時点で長男が不動産を承継することになるため、被相続人が亡くなってから遺産分割成立までの賃料に関する問題が生じません。また、賃貸不動産の賃料を管理する専用の口座を用意しておき、遺言書でその口座を長男に相続させることで、被相続人が亡くなる前の賃料に関しても承継方法を決めておくことができます。
家族信託の活用
家族信託を活用し、賃貸不動産を信託しておくと、賃貸不動産の賃料も信託財産になります。そして、信託財産は遺産ではありません。そのため、相続手続きではなく信託契約で信託財産の承継方法を決めることになります。例えば、委託者である父の死亡により信託契約を終了させ、帰属権利者である長男に信託財産を承継させることを信託契約で定めておくことで、賃貸不動産と賃料の承継方法を決めておくことができます。また、家族信託を利用すれば、相続発生前に被相続人が認知症などで判断能力を失った場合でも、賃貸不動産の管理をスムーズに行うことも可能になります。
まとめ
相続発生時の賃料の扱いは、タイミングや状況によって異なります。そのため、被相続人が想定していなかった事態に陥るリスクや、相続人の間でトラブルが生じるリスクがあります。
生前に遺言書や家族信託を活用しておくことで、これらのリスクを予防することができます。賃貸不動産の相続について不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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