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Q. 特別受益の持ち戻しとは? 相続において特別受益がある場合の遺産の取得額の計算方法について解説

2024年9月19日更新

相続・遺言

【この記事の内容】

・特別受益がある場合の遺産の取得額の計算方法
・計算上の注意点


特定の相続人に特別受益がある場合、不公平感を感じる相続人もいるでしょう。特別受益の主張が認められる場合、相続人間の公平を図るために特別受益を考慮して遺産分割手続きが行われます。しかし、特別受益を考慮した計算方法は複雑で、一般の方が正確に計算をすることは困難です。この記事では具体的な事例を用いて、特別受益がある場合の遺産の取得額の計算方法についてわかりやすく解説します。

特別受益がある場合の遺産の取得額の計算方法

特別受益がある場合の遺産(相続財産)の取得額の計算は以下の流れで行います。

  • ①相続開始時のプラスの遺産に遺産の前渡しと評価できる生前贈与を足す
  • ②相続人ごとに①に相続分を掛ける
  • ③相続人ごとに②から特別受益を引く
  • ④各相続人の③の金額の割合から各相続人の遺産の取得割合を算出する
  • ⑤遺産分割時のプラスの遺産に④の遺産の取得割合を掛ける

それぞれの用語について簡単に解説した後、事例を用いて計算方法について解説します。

持ち戻しとは

相続開始時のプラスの遺産に特定の相続人が取得した遺産の前渡しと評価できる生前贈与を加えることを持ち戻しといいます。遺贈は加えません。遺贈の目的物は遺産に含まれているためです。

相続分とは

相続分とは相続する割合のことです。遺産分割において特別受益がある場合は、単に遺産を相続分で分けるのではなく、特別受益によって修正することになります。遺言で相続分が指定されていない場合は、民法で定められている相続分(法定相続分)に基づいて、遺言で相続分が指定されている場合は、指定されている相続分(指定相続分)に基づいて計算します。

特別受益とは

遺贈や遺産の前渡しと評価できる生前贈与などは特別受益として最終的な取り分を計算する際に考慮されます。特別受益に関する詳細は下記の関連記事をご確認ください。

(関連記事)「遺産分割における特別受益とは?特別受益の具体例を解説

事例Ⓐ

それでは以下のケースで特別受益がある場合の遺産の取得額の計算をしてみましょう。

相続人
配偶者と子

遺産(相続開始時の時価)
・土地(5000万)
・預貯金(3000万円)

生前贈与(相続開始時の時価)
・子に土地(2000万)が生前贈与されていた

①相続開始時のプラスの遺産に遺産の前渡しと評価できる生前贈与を足す

相続開始時のプラスの遺産は土地5000万と預貯金3000万円の計8000万円です。
不動産の贈与は一般的には遺産の前渡しと評価できるため、遺産の前渡しと評価できる生前贈与として子への土地の生前贈与(2000万円)を足します。計算式は以下の通りです。

【計算式】
8000万円+2000万円=1億円

②相続人ごとに①に相続分を掛ける。

配偶者と子の法定相続分は各2分の1です。したがって、配偶者については1億円に2分の1を掛け、子についても1億円に2分の1を掛けます。

【計算式】
配偶者:1億円×2分の1=5000万円
子:1億円×2分の1=5000万円

③相続人ごとに②から特別受益を引く

子については遺産の前渡しと評価できる生前贈与として2000万円の特別受益があるため、5000万円から2000万円を引きます。

【計算式】
配偶者:5000万円-0円=5000万円
子:5000万円-2000万円=3000万円

④各相続人の③の金額の割合から各相続人の遺産の取得割合を算出する。

配偶者の③の金額は5000万円、子の③の金額は3000万円ですから、配偶者は遺産の8分の5、子は遺産の8分の3を取得することになります。

【計算式】
配偶者:5000万円÷8000万円=8分の5
子:3000万円÷8000万円=8分の3

⑤遺産分割時のプラスの遺産に④の遺産の取得割合を掛ける

相続開始時の時価と遺産分割時の時価が同じで、遺産の構成も変わっていない場合、配偶者が8000万円の8分の5の5000万円、子が8000万円の8分の3の3000万円の遺産を取得することになります。この場合は③の計算結果と同じになります。

もっとも、相続開始時の時価と遺産分割時の時価が異なる場合や、遺産の構成が変わっている場合には③の計算結果と異なることになるため注意が必要です。例えば、遺産分割時の遺産の時価が計4000万円だった場合は、配偶者が4000万円の8分の5の2500万円、子が4000万円の8分の3の1500万円の遺産を取得することになります。

【遺産分割時の遺産の時価が相続開始時と同じ場合の計算式】
配偶者:8000万円×8分の5=5000万円
子:8000万円×8分の3=3000万円

【遺産分割時の遺産の時価が計4000万円の場合の計算式】
配偶者:4000万円×8分の5=2500万円
子:4000万円×8分の3=1500万円

(関連記事)「Q. 遺産分割における不動産の評価額や評価方法について解説

事例Ⓑ

次は子に生前贈与された土地が1億2000万円だった場合について計算してみましょう。

①相続開始時のプラスの遺産に遺産の前渡しと評価できる生前贈与を足す

事例Ⓐと同様、土地5000万と預貯金3000万円の計8000万円に子への土地の生前贈与(1億2000万円)を足します。

【計算式】
8000万円+1億2000万円=2億円

②相続人ごとに①に相続分を掛ける

事例Ⓐと同様、配偶者については2億円に2分の1を掛け、子についても2億円に2分の1を掛けます。

【計算式】
配偶者:2億円×2分の1=1億円
子:2億円×2分の1=1億円

③相続人ごとに②から特別受益を引く

子については遺産の前渡しと評価できる生前贈与として1億2000万円の特別受益があるため、1億円から1億2000万円を引きます。

【計算式】
配偶者:1億円-0円=1億円
子:1億円-1億2000万円=-2000万円

子の計算結果がマイナスになってしまいました。このような場合、子については0と考えます。子は遺産の分配を受けられないことになりますが、2000万円を返還して遺産に組み入れるということにはなりません。なお、生前贈与が遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求をされるおそれがあるため注意が必要です。

④各相続人の③の金額の割合から各相続人の遺産の取得割合を算出する

配偶者の③の金額は1億円、子の③の金額は0円ですから、配偶者が遺産すべてを取得することになります。

【計算式】
配偶者:1億円÷1億円=1

⑤遺産分割時のプラスの遺産に④の遺産の取得割合を掛ける

配偶者が遺産分割時のプラスの遺産すべてを取得することになります。相続開始時の時価と遺産分割時の時価が同じで、遺産の構成も変わっていない場合には、配偶者が土地5000万と預貯金3000万円を取得することになります。

持ち戻し免除の意思表示に注意

被相続人は、特別受益として考慮しない旨の意思表示(持ち戻し免除の意思表示)をすることができます。明確には持ち戻し免除の意思表示を行っていない場合でも、様々な事情を考慮して持ち戻し免除の意思表示を黙示的にしていたと認められることは少なくありません。相続人としては遺産の取得額を計算する前に持ち戻し免除の意思表示が認められないか検討する必要があるため注意が必要です。また、被相続人としても、相続人間のトラブルを予防するために持ち戻しを免除するのかしないのかについて遺言書などで明確にしておき、場合によっては免除する理由を明らかするなどの対応をしておくべきでしょう。

遺産分割の当事者の合意で特別受益について決めることができる

遺産分割の当事者の合意で特別受益について決めることができる点にも注意が必要です。例えば、遺産の時価の基準時を合意で決めることができます。相続開始時の遺産の時価と、遺産分割時の遺産の時価をそれぞれ調査するのは大変な上、スムーズに遺産分割することができなくなることもあるため、時価の基準時を合意で決めることは少なくありません。また、特別受益の有無自体も合意で決めることができます。

その他計算上の注意点

また、以下の点にも注意が必要です。

  • すべての生前贈与が特別受益に該当するわけではない
  • ③の計算結果がマイナスになる相続人がいる場合は、遺留分の侵害の有無を確認する必要がある
(関連記事)「Q. 【裁判例の紹介】生命保険金(死亡保険金)は遺産分割の特別受益に該当するのか?

まとめ

以上、特別受益がある場合の遺産の取得額の計算方法について解説いたしました。親が子に生前贈与し、特別受益が問題になるケースは少なくありません。しかし、特別受益の計算はわかりにくく注意すべき点も多くあります。特別受益が問題になる場合には、遺産分割協議を進める前に弁護士に相談することをお勧めいたします。

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【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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