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Q. 死因贈与とは何か?遺贈との違いを解説

2023年9月14日更新

相続の疑問点

死因贈与と遺贈はそれぞれ死後の財産処分により財産を承継させる方法ですが、死因贈与と遺贈のどちらを使うべきでしょうか?どちらを使うべきかイメージできるよう、この記事では主に死因贈与と遺贈の違いについて解説します。それでは詳しく見ていきましょう。

死因贈与とは?成立要件について

死因贈与は贈与者の死亡によって効力が生じる贈与のことです。贈与契約の成立には当事者の合意が必要ですが、遺言と異なり方式について定めはなく口頭でも贈与契約が成立します。

死因贈与と遺贈との共通点

遺贈との主な共通点は以下の通りです。

  • 相続が開始することにより財産が移転する
  • 相続人以外にも財産を承継することが可能
  • 贈与税ではなく相続税の対象になる
  • 執行者を定めることが可能

遺贈と同様、執行者が指定されていない場合、贈与者の相続人全員が所有権移転登記の登記義務者になるため、円滑な登記手続をするためにも執行者を定めると良いでしょう。

死因贈与と遺贈との相違点

死因贈与と遺贈の主な違いは以下の通りです。

死因贈与遺贈
成立要件・当事者の合意(民法549条)
・方式の定めはなく書面がなくても成立する。パソコンで書面を作成してもよい。
・遺言によって単独で行う(964条)
・遺言には方式の定めがある(960条など)
確定的に有効に行うための要件・行為能力が必要 ・例えば未成年の場合、親権者の同意があれば確定的に有効な死因贈与契約をすることができる。
・負担のない死因贈与の受贈者は、親権者の同意がなくても確定的に有効な死因贈与契約をすることができる。
15歳以上(民法961条)
*成年被後見人が遺言をするには制限がある。
仮登記死因贈与に基づく所有権移転の仮登記が可能仮登記できない
撤回の可否・原則としていつでも撤回できる(民法1022条準用、最判昭和47年5月25日)
・例外的に負担付き死因贈与で、受贈者が負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合は、特段の事情がない限り撤回できない(最判昭和57年4月30日)
いつでも遺言の方式に従って撤回できる(民法1022条)
相続開始後に相続人による撤回の可否書面によらない死因贈与の場合、未履行部分について撤回が可能(民法550条)。撤回不可
放棄の可否放棄できない。放棄可能
検認の要否不要必要
負担の不履行に対する対応策負担付贈与の解除(民法553条、541条、542条)負担付遺贈に係る遺言の取消請求(民法1027条)
受遺者が先に死亡した場合の効力裁判例の判断が分かれている。無効(994条1項)
登録免許税固定資産税評価額の2%相続人に対する遺贈:固定資産税評価額の0.4%
相続人以外に対する遺贈:固定資産税評価額の2%
不動産取得税課税される。
土地・家屋(住宅):課税標準額の3% 家屋(非住宅):課税標準額の4%
課税標準額は原則として固定資産税評価額。ただし土地の場合は固定資産税評価額の2分の1。
相続人に対する特定遺贈:非課税
包括遺贈:非課税
相続人以外の者に対する特定遺贈:課税される
遺留分侵害額の負担の順序受遺者→死因贈与の受贈者→受贈者の順(裁判例、多数説)受遺者→死因贈与の受贈者→受贈者の順(裁判例、多数説)

死因贈与のメリット

(1)方式の不備で無効になるリスクがない

遺言と異なり、方式の定めがないため、方式の不備で無効になるリスクはありません。ただし、死因贈与の効力について争われるリスクを減らすためには、公正証書を作成することをお勧めします。

(2)受贈者に放棄される心配がない

遺贈と異なり、死因贈与は放棄ができないため、遺贈と比べ財産を承継させやすいといえます。

(3)受贈者側が権利を確保しやすい

遺贈は相続開始前に所有権移転請求権の仮登記をすることができませんが、死因贈与は相続開始前に死因贈与に基づく所有権移転の仮登記をすることができます。また、遺贈はいつでも撤回ができるのに対し、負担付き死因贈与で負担の履行をしたときは、原則として撤回ができません(最判昭和57年4月30日)。

したがって、遺贈と比べて負担付き遺贈は、受贈者側が権利を確保しやすいといえます。

死因贈与のデメリット

(1)争いになるリスク

死因贈与は口頭でも成立しますが、他の相続人は死因贈与について知らないことも多いため、しっかりとした契約書を作成しておかないと死因贈与無効確認訴訟を提起されるなどの争いになるリスクが高くなります。

(2)負担付死因贈与は撤回できない場合がある

遺贈はいつでも撤回できますが、負担付死因贈与は受贈者が負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合は、特段の事情がない限り撤回できません(最判昭和57年4月30日)。

(3)登録免許税・不動産所得税が遺贈と比べて多くかかる場合がある

上記の表で示した通り、登録免許税・不動産所得税が遺贈と比べて多くかかる場合があります。

まとめ

以上のとおり、死因贈与と遺贈にはそれぞれメリット・デメリットがあります。どちらを利用すべきか専門家に相談しながら慎重に判断することをお勧めします。

※遺言書の作成をご希望の方はこちらのページをご覧ください。

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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