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Q. 【負動産問題】相続土地国庫帰属制度とは?制度の概要・要件・負担金など手続きについて解説

2023年8月11日更新

荒地

土地の価値が低く利用が困難なのに固定資産税や管理費用といったコストがかかってしまう不動産は、いわゆる負動産と呼ばれていますが、昨今では、相続を原因として望まずに負動産を所有するケースが増えています。

負動産はコストがかかるだけで処分にも困るため、できれば次世代に残さないよう、手放せるなら手放しておきたいところです。これまでは土地所有権を放棄するための法律がなく、負動産の所有権を放棄することができませんでしたが、令和5年4月27日から、相続により望まずに所有することになった不動産について所有権の放棄を認める、という相続土地国庫帰属制度がスタートしました。今後は、この制度を利用して負動産を放棄するケースが増えることが見込まれています。

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れは、①申請 → ②審査 → ③承認 → ④負担金支払いによる国庫帰属になります。順番に見ていきましょう。

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相続土地国庫帰属制度の申請要件

申請は土地の所有者全員で行う必要があり、一人は相続又は遺贈で土地を所有した相続人がいなければなりません。死因贈与の場合は、望まずに取得した訳ではないということで、制度の対象外となっています。

また、所在等が不明な共有者がいて、共有者全員で申請ができない場合には、所在不明の共有者の持分を取得する制度を利用する等の対応が必要になります。

なお、以下の場合、相続土地国庫帰属制度の申請がそもそもできません。

  • 建物がある場合
  • 抵当権や賃借権等、担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている場合
  • 現に通路や水道用地、用悪水路に用いられている土地や、墓地、境内地が含まれている場合
  • 特定有害物質により汚染されている場合
  • 土地の境界が明らかでない場合や、所有権の存否等に争いがある場合

承認要件

申請後、申請した土地が以下の場合にあたらないか審査され、問題なければ承認されます

①高さ5メートル、勾配30度以上の崖があり、通常の管理に過分の費用又は労力を要する場合

②地上に通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物がある場合

例)投棄された自動車がある場合

③地下に除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物がある場合

例)転落の危険のある古井戸等

④他の土地を通らないと公道に出られない土地で、かつ、通行する権利が現に妨害されている場合

例)周りが他の土地に囲まれており、公道への通路が封鎖されてしまっている通路等

⑤使用又は収益が現に妨害されている場合(程度が軽微で土地の通常の管理又は処分を阻害しないと認められるものを除く。) 

例)土地に不法占拠者がいる場合等

⑥土地に起因する災害により生命身体財産に被害が生じるおそれ(被害拡大・防止に軽微でない措置が必要な場合)がある場合

例)土砂崩れ防止のために工事をしないといけない場合等

⑦動物が生息する土地で、その動物により生命身体農産物樹木に被害が生じるおそれ(軽微で通常の管理処分を阻害しないものは除く)がある場合

例)鹿による食害や剥皮等の森林被害が発生する具体的な危険性がある場合等

⑧主に森林として利用される土地で、市町村森林整備計画の造林、間伐、保育等に関する事項に適合しておらず、造林、間伐、保育を実施する必要がある場合

例)適切な管理がされておらず、国による整備が必要な状態の森林等

⑨法令の規定に基づく処分により国が通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実な場合

例)土地改良区内の農地で賦課金の支払が近い将来必要となる土地等

⑩法令の規定に基づく処分により承認申請者が所有者として金銭債務を負担する土地で、国庫に帰属したことに伴い、国が法令の規定により当該金銭債務を承継することとなる場合

例)土地改良区内の農地で賦課金の支払が現に必要な土地等

相続土地国庫帰属制度における負担金(法務省の計算シートも紹介)

承認後、負担金を納付することで土地の所有権が国庫に帰属します。以下の4種目毎に負担金が定められています。

  • 都市計画法の市街地区域又は用途地域内の宅地
  • 市街化区域、用途地域、農用地区域、土地改良事業等の施工区域内の農地
  • 森林
  • その他

それぞれ算定式がありますが、その他のみ、面積にかかわらず負担金が20万円です。法務省が負担金額の自動計算シートをエクセルで公開していますので、興味がある方は下記URLをご確認ください。(外部リンク)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

また、原則として負担金は一筆ごとに算定されますが、隣接する二筆以上の土地が同じ種目の場合 、土地の面積を合算した一筆の土地として負担金を算定するよう申し出ることができます。例えば、上記の都市計画法の市街地区域又は用途地域内の宅地に該当しない宅地の場合、一筆あたりの負担金は面積にかかわらず20万円です。そのため、このような宅地が二筆ある場合、通常は負担金が20万円×2筆の計40万円となります。ところが、二筆隣接している場合、申し出ることで、負担金の算定の際に一筆として扱われ、負担金が20万円×1筆の計20万円となります。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は申請の手間や手数料・負担金の金銭的負担がありますが、国庫に帰属すれば、負動産のコストを気にしなくて良くなりますし、なによりも次世代へ負動産という負の遺産を残さずに済みます。費用が見合う、見合わないといった点を含め、国庫帰属制度に関心がある方は一度弁護士までご相談ください。


【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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