成年後見人(法定後見人)
認知症や障害により判断能力がない場合、預金口座の解約、不動産の処分、遺産分割協議等の法律行為が出来なくなり、遺産分割協議が進まず相続手続が止まったり、悪質商法等の被害にあったりする原因にもなります。
このような事態を避けるには、後見開始の審判の申立てを行い、成年後見人が本人に代わって法律行為を行ったり、悪質商法の契約を取り消したりする必要があります。
成年後見制度については弁護士にご相談ください。
成年後見(法定後見)制度とは
後見とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力がない方について利害関係人が申立てを行い、家庭裁判所が「後見開始の審判」をすることで、成年後見人(援助を行う方)を選任する制度です。あらかじめ任意後見契約により受任者を定めておく任意後見制度とは異なり、家庭裁判所の裁量で成年後見人が選任されます。成年後見人は、被後見人の財産を管理し、法定代理人として法律行為を行い、また、被後見人が行った法律行為を取消します。これらの権限を行使することで被後見人を保護するのが役割です。
なお、当事務所が後見開始の審判を申し立てた案件では、遺産分割協議を行いたいものの、相続人の中に認知症の人がいるために成年後見人を選任しなければならないというケースが非常に多い状況です。
後見開始の審判の申立てについてご依頼いただいた場合の流れ
(1) 面談
申立てに必要な事項を確認し、後見制度について説明を行います。主な確認・説明事項は以下の通りです。
【確認事項】
- ご本人の判断能力、財産(内容と管理状況)、生活や介護等の状況
- 成年後見人候補の親族の有無と、その方に関する事情
【説明事項】
- 他の制度の説明(ご本人の保護に他の制度が適している場合)
- 成年後見人の職務内容について(ご依頼者様が成年後見人候補者の場合)
- 手続上の注意点
- 必要書類に関する説明
(2) 必要書類の収集
申立てに必要な書類を収集し、不備や不足がないか確認します。特に診断書は判断能力に関する重要な資料ですが、成年後見用の診断書の一部用語の意味が医師にとって理解しづらいこともあるため、誤解を生じないよう弁護士が医師に対して説明をする場合もあります。
(3) 申立書面の作成
ご依頼者様から伺った事情や収集した書類に基づき、後見開始申立書、申立事情説明書、財産目録、収支予定表、親族関係図等の書面を作成します。
(4)家庭裁判所への申立て
家庭裁判所に申立書類を郵送し、申立てを行います。
(5) 審査
裁判所が後見開始について審査を行います。ご依頼者様の面接、ご本人の精神鑑定、親族への問い合わせ等が必要に応じて行われます。弁護士が面接に同席することも可能です。
(6) 審判
裁判所が後見開始する旨の判断をした場合には、審判が下され、成年後見人が選任されます。なお、誰を成年後見人に選任するかは家庭裁判所の裁量であるため、成年後見人の候補者がいる場合でも、別の方が選任される場合もあります。
(7)審判の確定
成年後見人に審判書が届いてから2週間以内に不服申立てがなければ審判が確定します。成年後見人が正式に活動を始めることになります。
後見開始申立ての手続費用
費用は以下のとおりです。
- 申立手数料 800円
- 登記手数料 2600円
- 送達・送付費用 3270円(東京家庭裁判所)
- 鑑定費用 おおむね5~10万円程度(鑑定が不要な場合もあります)
- 書類の取得費用(ケースに応じて異なります)
なお、書類の取得費用以外については、通常、後見開始の審判をする際に被後見人の負担とするのが東京家庭裁判所の運用です。
また、申立てを弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が必要です。
後見開始申立てについて弁護士に依頼するメリット
後見開始申立てを弁護士に依頼すると、煩雑な手続きや書類作成をご依頼者様自身に代わって弁護士が行います。また、弁護士が専門的な知識と経験に基づき資料の確認や書面の作成等を行い、適切な申立てが可能となります。
成年後見人に関する相談をご希望の方は当事務所にご連絡ください。
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