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Q. 任意後見制度の受任者(後見人)について 任意後見人なれる人や誰がなるべき?について解説

2024年9月14日更新

高齢者と嫁

【この記事の内容】

・任意後見受任者とは
・任意後見受任者がすること
・任意後見受任者に適した人
・任意後見受任者が任意後見監督人選任申立てをしてくれない場合の対処法


任意後見制度は、成年後見制度のなかでも判断能力低下後の生活に自分の意思を反映させやすい制度で、受任者(将来任意後見人としてサポートをしてくれる人)も自分自身で選ぶことができます。任意後見人として適している人はどういった人なのかについて知っておくことで受任者を適切に選ぶことが可能になります。なお、任意後見制度の概要については下記の関連記事をご確認下さい。

(関連記事)「Q. 任意後見制度とは 制度の概要や手続きの流れなどを解説
(関連記事)「Q. 任意後見制度と家族信託の違いとは? どちらを選ぶべきか違いを比較
(関連記事)「Q. 法定後見制度と任意後見制度の違いとは? 比較して解説

任意後見契約の受任者とは

任意後見契約の受任者とは、委任者の生活や療養看護及び財産の管理に関する契約や手続き等の事務の委託を委任者から受けた人のことです。任意後見契約の受任者は、委任者の判断能力が低下し、任意後見契約の効力を生じさせるまでの間は、「任意後見受任者」として任意後見契約の効力を生じさせるタイミングを見極めることになります。そして、将来、委任者の判断能力が低下し、任意後見契約の効力を生じさせた後は、「任意後見人」として後見事務を行い、委任者の生活をサポートします。

任意後見受任者としてすること

任意後見受任者は、任意後見契約の効力を生じさせるタイミングを判断するために、委任者や委任者の身の回りの人と定期的に連絡を取り、委任者の判断能力を定期的に確認します。定期的に連絡を取るなかで、委任者の判断能力が認知症などの精神上の障害によって不十分になったことを確認したら、診断書などの書類を集めて任意後見監督人選任申立ての手続きを行い、任意後見契約の効力を生じさせ、任意後見による支援・保護を開始させます。定期的に連絡を取ることや、判断能力が不十分になった段階で、任意後見契約の効力を生じさせるために任意後見監督人選任申立てを行うことを契約で義務付けることも可能です。

任意後見人としてすること

任意後見監督人が選任され、任意後見契約による支援・保護が開始すると、任意後見受任者は任意後見人として任意後見監督人と相談や連携しながら後見事務を行います。後見事務はあらかじめ契約で定められ、登記された事項に限り行います。

後見事務には様々な項目がありますが、代表的な例は以下の通りです。他にどういった項目があるのか知りたい方は、法務省令で定められている任意後見契約の様式で後見事務の項目を一覧することができます。

【委任者の生活や療養看護に関する後見事務】

  • 介護契約の締結や解除
  • 施設入所契約の締結や解除
  • 医療契約の締結や解除

【財産管理に関する後見事務】

  • 財産目録の作成
  • 預貯金などの財産の管理
  • 生活費の送金
  • 年金や保険金の受取
  • 家賃や公共料金の支払い
  • 不動産などの重要な財産の処分
  • 賃貸借契約の締結や解除
  • 遺産分割

なお、直接介護を行うといった事実行為や死後の事務については任意後見では対応できません。任意後見とは別に委任契約や死後事務委任契約を締結することで対応することができます。

後見人になれない受任者

受任者には法人を含め誰でもなることができますが、受任者が後見人になれない場合は任意後見による支援・保護を開始することができないため注意が必要です。後見人になれない受任者は以下の通りです。

【後見人になれない受任者】

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者
  • 行方の知れない者
  • 委任者に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
  • 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

受任者に適した人とは

(1) 委任者が死亡するまで後見事務を適切に行うことができる

受任者は、任意後見による支援・保護が開始してから委任者がお亡くなりになるまで委任者の代わりに後見事務を行います。そのため、受任者に適しているのは、委任者がお亡くなりになるまで後見事務を適切に行う能力がある人です。

後見事務を適切に行う能力の有無は、後見事務の内容とその人の能力を考慮して判断することになります。その人の能力からすると後見事務すべてを適切に行うことは難しい場合もあります。そのような場合には、後見事務のうち難しい部分を外注可能にしておくことで後見事務の手間や難しさをが軽減され、結果として、後見事務が適切に行われるようになることもあるでしょう。また、後ほど解説しますが、複数の後見人で分業することも後見事務の手間や難しさを軽減する対策の一つです。

また、受任者が認知症になると後見事務を適切に行うことが難しくなります。男性の平均寿命が80歳前半、女性の平均寿命が80歳後半、80歳~84歳の認知症率が約20%、85歳~89歳の認知症率が約40%と言われており、委任者と受任者が同年代の場合、後見事務を最後まで行うことができないリスクが高くなります。一方、65歳から69歳の認知症率は約3%と言われており、委任者より受任者が20歳以上若いと認知症によって後見事務を最後まで行うことができないリスクはかなり下がります。また、受任者が法人の場合は、認知症や死亡によって担当者が変わるリスクはありますが、認知症や死亡によって法人として後見事務を行えなくなるリスクはありません。認知症や死亡によって後見事務を行えなくなるリスクの観点からは、受任者は委任者より20歳以上若い人か、法人が適しています。

(2) 委任者から信頼されている

委任者が安心して受任者に財産を預け、後見事務を任せるには委任者から信頼されている必要があります。

家族などの親族が適しているケース

委任者の親族は委任者の生活状況に詳しいことが多いため、一般的には委任者の生活や療養看護に関する後見事務に適しています。他方で、後見事務はその内容によっては手間が多くかかったり難しかったりします。また、任意後見監督人と連携して行う必要もあり、不慣れな方には負担が大きくなりやすいため注意が必要です。特に、仕事などをしている家族にとっては思わぬ負担になることもあります。

弁護士などの専門職が適している場面

専門職は面談などで委任者の生活状況を把握してはいますが、親族ほどは詳しくありません。もっとも、委任者と定期的に連絡を取り、委任者の家族や身の回りの人といった関係者からも事情を伺うなかで委任者の生活状況に詳しくなることは可能です。また、専門職は後見事務を仕事として行っているので思わぬ負担になるといったこともありません。身寄りのない方のケースについても弁護士などの専門職が適しています。

任意後見受任者は複数人決めておくことが可能

任意後見受任者は複数人決めておくことが可能です。任意後見受任者を複数人決めておくことで分業することが可能になります。例えば、委任者の家族に委任者の生活や療養看護に関する後見事務のうち、家族にとって大きな負担とならない範囲を任せ、そのほかの後見事務を専門職に任せることで、それぞれの適性にあった後見事務を行うことができます。ただし、任意後見受任者を複数決める場合には、契約時にかかる手数料が増加する上、任意後見人の報酬額も人数分決める必要があることなどに注意が必要です。

判断能力が低下しているのに受任者が選任申立てをしてくれない場合

(1) 受任者以外の人が任意後見監督人選任申立てをする

任意後見監督人選任申立ては、委任者、配偶者、4親等内の親族も行うことができます。ただし、委任者の判断能力が低下しているのに任意後見監督人選任申立てをしない受任者には、適切に後見事務を行わないリスクがあります。そのため、本当にその受任者が任意後見をすることになってよいのか検討する必要があります。なお、委任者自身が選任申立てを行うには、選任申立てをするだけの判断能力が必要です。

(2) 別の人と任意後見契約を締結する

現在の受任者が任意後見人になると本人の支援・保護にならない場合には、任意後見契約を解除し、別の人と任意後見契約を締結することも考えられます。ただし、委任者に任意後見契約を解除し、別の任意後見契約を締結するだけの判断能力が必要になります。なお、任意後見契約がスタートする前であれば委任者が一方的に解除することも可能です。

(3) 法定後見開始審判の申立てを行う

現在の受任者が任意後見人になると本人の支援・保護にならない場合には、委任者、配偶者、4親等内の親族が法定後見開始審判の申立てを行い、法定後見をスタートさせることも考えられます。ただし、任意後見契約が締結され登記されている場合に法定後見をスタートするには委任者の利益のため特に必要があることが必要です。そのため、法定後見申立ての前に任意後見契約を解除し、解除の登記申請を行うことも検討する必要があります。なお、委任者自身が法定後見開始審判の申立てや任意後見契約の解除をするには、申立てや解除をするだけの判断能力が必要になるため注意が必要です。

まとめ

以上、任意後見制度の受任者について解説いたしました。受任者を選ぶ際には、受任者の能力と後見事務の内容、受任者との信頼関係などが重要になります。また、任意後見制度を継続的に利用するためには受任者に支払う報酬についても十分に検討する必要があります。受任者をどう選ぶべきかお悩みの方は弁護士までご相談ください。


【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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