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Q. 相続分の指定とは何か?指定相続分について解説

2024年11月9日更新

相続問題

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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【この記事の内容】

・相続分の指定の方法
・相続分の指定をするとどうなるのか

相続分の指定をする際の注意点

遺言がない場合、共有状態にある相続財産について相続人間で遺産分割を行う必要がありますが、遺産分割は法定相続分(民法が定める相続分)を基準にして行うことになります。他方、遺言で相続分を指定した場合、遺産分割は指定した相続分(指定相続分)を基準にして行われることになります。相続分の指定をすることで、相続人に法定相続分と異なる割合で財産を承継させることが可能となるのです。ただし、相続分の指定には遺言で行う必要があるといった注意点があります。この記事では、相続分の指定の方法、相続分の指定をするとどうなるのか、相続分の指定をする際の注意点等について解説します。 

相続分の指定とは

相続分の指定とは、法定相続分と異なる割合の相続分を定めることです。相続分の指定をするには以下の2つの方法があります。

①被相続人が遺言で相続分を指定する
②被相続人が遺言で第三者に相続分の指定を委託し、第三者が相続分を指定する

被相続人が遺言で相続分を指定する場合の条項例は以下の通りです。

【条項例】

第〇条 遺言者は、次のとおり相続人の相続分を指定する。
    妻〇〇(昭和〇年〇月〇日生) 3分の2

(関連記事)「Q. 法定相続分とは?遺産相続の分配割合について解説

相続分の指定の要件

(1) 被相続人が相続分を指定する場合

①被相続人が遺言で相続分を指定し、②遺言の効力が生じることで、相続分を指定することができます。

(2) 被相続人が第三者に委託する場合

①遺言で第三者に相続分の指定を委託し、②遺言の効力が発生した後に第三者が相続分を指定することで、相続分を指定することができます。なお、相続分の指定の効力は相続開始時に遡って生じます。

(3) 注意点

 相続分の指定をする場合の主な注意点は以下の通りです。

  • 遺言で行う必要がある
  • 相続人の一部のみに相続分の指定をした場合、他の相続人の相続分が不明確になる場合がある
  • 相続分の指定が相続人の遺留分(最低限の取り分)を侵害する場合がある。
  • 第三者への委託の場合、第三者が相続分の指定をしてくれない場合がある
  • 相続人や包括受遺者に相続分の指定を委託できるかは見解が分かれている。

相続分を指定するとどうなるのか

遺産分割対象財産を指定相続分で共有する

各相続人は相続開始から遺産分割までの間、遺産分割の対象となる財産を、法定相続分ではなく、指定相続分の割合に応じて共有持分を有します。ただし、法定相続分を超える共有持分を第三者に主張するには対抗要件(不動産の場合は登記)を備える必要があり、注意が必要です。

可分債権の扱い

可分債権(貸金返還請求権などの数字で分割することができる債権)は、指定相続分に従って当然に分割され、遺産分割の対象になりません。ただし、法定相続分を超える部分を第三者に主張するには対抗要件(例えば、内容証明による通知)を備える必要があります。また、遺産分割の当事者全員で合意をすれば、可分債権を遺産分割の対象とすることは可能です。なお、預貯金債権は、当然に分割されず遺産分割の対象になります。
債権の相続について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご確認ください。

(関連記事)「準備中

可分債務の扱い

可分債務は相続開始と同時に当然に分割され、各相続人が相続分に応じて承継します。ただし、相続債務の債権者は、指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合を除き、各相続人に対し、法定相続分に応じて権利を行使することができます。

相続人の一部のみに相続分を指定した場合

例えば、相続人が配偶者、子A、子Bの3人で、子Aだけに3分の1の相続分を指定した場合、配偶者と子Bの相続分は法定相続分によって決まります(民法902条2項)。しかし、具体的な計算方法については見解が分かれています。相続分を指定する場合には不要な争いを避けるために全員の相続分を指定すると良いでしょう。

相続分の指定が遺留分を侵害する場合

相続分の指定が遺留分を侵害する場合、遺留分侵害額請求が可能です。遺留分を侵害しないように相続分の指定をすることで、相続人が遺留分侵害額請求で揉めるリスクを回避できます。なお、旧法では遺留分減殺請求という制度でしたが、相続法改正により遺留分侵害額請求という制度に変わりました。遺留分侵害額請求について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご確認ください。

(関連記事)「Q. 遺留分を請求する期限とは? 遺留分侵害額請求権や遺留分に相当する金銭の請求権の時効について解説

相続分の指定と特定財産承継遺言の違い

相続分の指定だけがされていた場合は、具体的な分割方法が決まっていないため、遺産分割協議が必要です。他方、特定財産承継遺言(特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言)の場合は遺産分割協議が不要で、相続開始と同時に特定の財産を特定の相続人に取得させることができます。なお、特定財産承継遺言の対象となる財産の価額が、法定相続分を超える場合には、その特定財産承継遺言は相続分の指定を伴うものと解釈されることになります。相続分の指定と特定財産承継遺言を併用することは、法定相続分と異なる割合で相続人に財産をスムーズに承継させる方法の一つです。

【特定財産承継遺言の条項例】

第〇条 遺言者は、遺言者が所有する下記の土地を、遺言者の妻〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
                    記
所在 〇市〇町〇丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇.〇〇平方メートル

以上、相続分の指定について解説いたしました。相続分を指定したことでかえってトラブルになる場合もありますので、相続分の指定をご希望の方は弁護士にご相談ください。

※遺言書の作成に関する相談をご希望の方は、(取扱業務)「遺言書作成」もご覧ください。

【しらと総合法律事務所の特徴】

相続に関する豊富な実績
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他の事務所で対応できないと言われた案件についても、当事務所において解決できた実績がありますので、是非あきらめずに当事務所にご相談下さい。代表弁護士の下、複数の弁護士でチームを組んで相続問題の解決に努めております。

幅広い業務範囲
開業以来10年間、遺産分割・遺留分侵害・預金の使い込みなどの相続トラブルはもちろん、相続放棄などの相続手続き代行や、遺言書作成・家族信託・事業承継などの生前の相続対策まで幅広い相続問題をサポートして参りました。
争いが生じた後に弁護士に相談するのではなく、争いにならないように、また、手続きだけで済むように弁護士に相談してください。

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