しらと総合法律事務所

調布オフィス
〒182-0024 東京都調布市布田5-24-1
アビタシオンヨシノ201
042-444-7160

三鷹武蔵野オフィス
〒181-0013 三鷹市下連雀3-42-13
三鷹南シティハウス211号室
0422-24-9855

【電話受付時間】
平日 10:00~13:00 / 14:00~18:00
(土日祝日を除く)

相続Q&A

遺産相続問題に関するよくある質問や、相続に関する基礎知識・豆知識、判例などをQ&A方式でご紹介いたします。

Q. 相続における遺留分侵害額の計算方法とは?

2024年9月27日更新

相続問題

【この記事の内容】

・遺留分侵害額の計算方法3ステップ
・遺留分を算定するための財産の価額の計算方法
・遺留分の計算方法
・遺留分侵害額の計算方法


特定の相続人が遺産の大部分を受け取る内容の遺言書があり、自分はほとんど受け取れないケースや、被相続人から多額の贈与を受けている方がいるといったケースでは遺留分が問題になります。遺留分が侵害されている場合には遺留分侵害額を請求することが可能ですが、遺留分侵害額の計算は複雑で、弁護士以外の方が正確に算定することは困難です。そこで、この記事では具体例を用いて遺留分侵害額の計算方法について解説いたします。

相続の相談初回60分無料

ご自宅や職場からオンライン法律相談が可能です。
また、相談だけでなく、ご依頼もオンラインで可能です。
現在、弁護士は、調停・審判・訴訟などの裁判手続きについて、多くの案件でウェブ会議や電話会議により出廷しております。地域を問わずご依頼いただける時代になりました。
遠方だからという理由であきらめることなく、是非お問い合わせください。
※電話相談・メール相談は対応しておりません。事務所での相談又はオンライン相談のみ対応しております。

お問い合わせは、こちらから!(←クリックまたはタップしてください)

遺留分侵害額の計算方法

遺留分侵害額の計算は以下の3ステップで行います。

  • ①遺留分を算定するための財産の価額を計算する
    遺留分を算定するための財産の価額は遺留分を計算する基礎になります。
  • ②遺留分を計算する
  • ③遺留分侵害額を計算する
    遺留分は兄妹姉妹以外の相続人が被相続人の財産について確保できる最低限の取り分のことで、最低限の取り分に不足する額が遺留分侵害額になります。そのため、遺留分を計算した後に遺留分がどの程度侵害されているのか計算します。

この記事では下記の具体例を想定して具体的な計算をしながら解説いたします。

【計算に用いる具体例】

被相続人 父
相続人 長男 次男
遺産 自宅4000万円 預貯金2000万円 借金1000万円
遺言書 遺産全てを長男に相続させる
生前贈与 父が亡くなる5年前に父が長男に住宅購入費として1000万円を贈与していた

遺留分を算定するための財産の価額

まずは、ステップ①の遺留分を算定するための財産の価額を計算します。計算式は以下の通りで、価額の基準時は被相続人が死亡した時点です。計算式の各要素について解説した後に具体例を用いて計算いたします。

【遺留分を算定するための財産の価額の計算式】

遺産(積極財産)+特別受益にあたる生前贈与(原則期間制限有り)+相続人以外への生前贈与(原則期間制限有り)-遺産(消極財産)

遺産(積極財産)

被相続人が亡くなった時点で被相続人が有していた財産のことを遺産といいます。ただし、被相続人のみに帰属する権利や祭祀財産は遺産ではありません。積極財産である遺産は、遺産のうちプラスの財産のことです。例えば、被相続人が有していた預貯金や不動産は積極財産である遺産にあたります。なお、遺産のことを相続財産ということもあります。

不動産については価額をどう評価するかが問題になります。不動産の評価方法については、下記の関連記事をご覧下さい。遺産分割と遺留分侵害額請求では手続きが異なりますが参考になります。

(関連記事)「Q. 遺産分割における不動産の評価額や評価方法について解説

特別受益に当たる生前贈与(原則期間制限有り)

例えば住宅購入費の生前贈与のような遺産の前渡しと評価できる相続人への生前贈与のことを特別受益にあたる生前贈与といいます。
特別受益にあたる生前贈与すべてが遺留分を算定するための財産の価額に加算される訳ではありません。原則として、相続開始前(被相続人が亡くなる)10年以内のものに限って加算されます。ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行われたものは10年より前のものも加算されます。

特別受益の具体例について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧下さい。

(関連記事)「Q. 遺産分割における特別受益とは?特別受益の具体例を解説

相続人以外への生前贈与(原則期間制限有り)

相続人以外への生前贈与は原則として相続開始前1年以内のものが加算されます。ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行われたものは1年より前のものも加算されます。

遺産(消極財産)

消極財産はマイナスの財産のことです。例えば被相続人が有していた借金は消極財産である遺産です。なお、葬儀費用、遺言執行費用、相続税等は被相続人が亡くなった時点で被相続人が有していた財産ではないため、そもそも遺産ではありません。そのため、遺留分を算定するための財産の価額を計算する際に考慮されません。

【具体例を用いた計算】
具体例では遺産(積極財産)として、自宅4000万円と預貯金2000万円があり、遺産(消極財産)としては借金1000万円があります。また、特別受益にあたる生前贈与として、父が亡くなる5年前に父が長男に住宅購入費として贈与した1000万円があり、相続人以外への生前贈与はありませんでした。したがって、具体例における遺留分を算定するための財産の価額は以下の通りになります。

【具体例における遺留分を算定するための財産の価額】
遺留分を算定するための財産の価額=遺産(積極財産)6000万円(自宅4000万円+預貯金2000万円)+特別受益にあたる生前贈与1000万円+相続人以外への生前贈与0-遺産(消極財産)1000万円=6000万円

算出された遺留分を算定するための財産の価額は次のステップである遺留分の計算の基礎になります。

【応用編】

不相当な対価をもってした有償行為が加算されることもある
売買等の有償行為は生前贈与ではありません。そのため、遺留分を算定するための財産の価額を計算する際に原則として加算されません。ただし対価が不相当で、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行われた有償行為については例外的に加算されます。なお、加算される際には目的物の価額から対価が差し引かれます。

【応用編】

保証債務は消極財産ではあるが、原則として遺留分を算定するための財産の価額の計算の対象にならない
先ほど遺留分を算定するための財産の価額を計算する際に消極財産が差し引かれる旨の解説をいたしました。しかし、厳密には消極財産すべてが差し引かれる訳ではありません。保証債務は消極財産ですが、実は遺留分を算定するための財産の価額を計算する際には原則として差し引かれない旨の裁判例(東京高裁平成8年11月7日判決)があります。この裁判例は、保証債務を履行せずに済むケースがあることや、仮に保証債務を履行したとしても主債務者の代わりに支払った分の返還を主債務者に求めることができること等を理由に、保証債務は主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出捐を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情がない限り差し引かれない旨の判断をしています。保証債務は原則として遺留分を算定するための財産の価額の計算の対象にならないということになります。

【応用編】

改正前(令和元年6月30日以前)に被相続人が亡くなっていた場合
遺留分制度は改正されており、令和元年6月30日以前に亡くなった方については遺留分減殺請求権、令和元年7月1日以降に亡くなった方については遺留分侵害額請求権が問題になります。遺留分侵害額請求権では特別受益にあたる生前贈与について10年の期間制限がありますが、遺留分減殺請求権では10年の期間制限がありません。被相続人が亡くなった日時によっては期間制限の有無が異なるため注意が必要です。

遺留分の計算方法

遺留分を算定するための財産の価額を計算したら、次はステップ②の遺留分を計算しましょう。計算式は以下の通りです。遺留分割合と遺留分権利者の法定相続分について解説した後に具体例を用いて計算いたします。

【遺留分の計算式】

遺留分を算定するための財産の価額×遺留分割合×遺留分権利者の法定相続分

遺留分割合


遺留分割合とは、遺留分権利者全体に留保されている遺留分の割合のことです。
遺留分割合は原則として2分の1、相続人が直系尊属(被相続人の親や祖父母等)のみの場合には例外的に3分の1になります。例えば、相続人が配偶者と被相続人の父親の場合は遺留分割合は2分の1です。また、具体例では相続人が長男と次男であるため、遺留分割合は原則通り2分の1です。

遺留分権利者の法定相続分


遺留分割合に各遺留分権利者の法定相続分を乗じることで各自の遺留分を計算します。具体例では相続人が長男と次男の子が2人であり法定相続分はそれぞれ2分の1になります。なお、被相続人の兄弟姉妹にはそもそも遺留分が認められていません。

【具体例を用いた計算】


具体例における次男の遺留分は以下の通りです。

遺留分を算定するための財産の価額6000万円×遺留分割合2分の1×次男の法定相続分2分の1
=1500万円

算出された次男の遺留分は次のステップである遺留分侵害額の計算の基礎になります。

遺留分侵害額の計算方法

最後にステップ③の遺留分侵害額を計算します。計算式は以下の通りです。遺留分割合と、遺留分権利者の法定相続分について解説した後に具体例を用いて計算いたします。

【遺留分侵害額の計算式】

遺留分-遺留分権利者の特別受益(期間制限無し)-遺留分権利者が遺産分割で取得すべき遺産(寄与分は考慮しない)+遺留分権利者が相続によって承継する債務

遺留分は最低限の取り分を確保できる制度であり、特別受益や債務も考慮して最低限の取り分の満たない部分を計算します。ただし、寄与分は考慮されません。なお、遺留分を算定するための財産の価額の計算における特別受益については原則として期間制限がありましたが、遺留分権利者の特別受益には期間制限が無いことには要注意です。

【具体例について】
遺留分権利者の特別受益
・次男は生前贈与等を受けていないため次男の特別受益は0円です。

遺留分権利者の具体的相続分
・遺産すべてを長男に相続させる遺言書があるため次男の具体的相続分は0円です。

遺留分権利者が承継する債務
・遺産すべてを長男に相続させる遺言書があるため父の借金も長男が承継します。そのため、次男が承継する債務は0円です。

【遺留分侵害額の計算式】
したがって遺留分侵害額の計算式は以下の通りになります。

遺留分侵害額=遺留分1500万円-遺留分権利者の特別受益0円-遺留分権利者の具体的相続分0円+遺留分権利者が承継する債務0円=1500万円

【応用編】

債権者には長男が父の借金をすべて承継したことを原則として主張できない
具体例のように長男が父の借金をすべて承継したとしても、債権者は原則として各相続人に対して法定相続分に応じて権利を行使することができます。そのため具体例において債権者は長男と次男に対してそれぞれ1000万円×2分の1=500万円を請求することができます。ただし、債権者が長男が父の借金をすべて承継したことを承認した場合には、債権者は長男に1000万円を請求することしかできず、次男には請求できなくなります。

遺留分には期間制限がある

遺留分侵害額請求権を行使する期限は下記の3点を知ってから1年しかありません。遺留分を請求したい場合には速やかに対応し、遺留分侵害額請求権を行使する必要があります。

・被相続人が亡くなったこと
・贈与又は遺贈があったこと
・その贈与又は遺贈が遺留分を侵害すること

また、正確な金額の計算には時間を要する場合でも、遅延損害金を発生させるには暫定的な金額を明示して請求する必要があります。

遺留分を請求する期限について詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧下さい。

(関連記事)「Q. 遺留分を請求する期限とは? 遺留分侵害額請求権や遺留分に相当する金銭の請求権の時効について解説

まとめ

以上、遺留分侵害額の計算について解説いたしました。遺留分侵害額の計算は複雑ですが、適切に計算ができないと解決が難しくなります。また、改正前と改正後で特別受益にあたる生前贈与について10年の期間制限の有無が異なる点にも注意が必要です。遺留分についてお悩みの方は弁護士にご相談下さい。

相続の相談初回60分無料

ご自宅や職場からオンライン法律相談が可能です。
また、相談だけでなく、ご依頼もオンラインで可能です。
現在、弁護士は、調停・審判・訴訟などの裁判手続きについて、多くの案件でウェブ会議や電話会議により出廷しております。地域を問わずご依頼いただける時代になりました。
遠方だからという理由であきらめることなく、是非お問い合わせください。
※電話相談・メール相談は対応しておりません。事務所での相談又はオンライン相談のみ対応しております。

お問い合わせは、こちらから!(←クリックまたはタップしてください)


【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
弁護士のプロフィールはこちら

お問い合わせ

相続・家族信託・事業承継以外のご相談は、しらと総合法律事務所をご覧ください。
調布・三鷹・武蔵野・稲城・狛江・府中・多摩・小金井・西東京・世田谷・杉並など東京都の各地域、川崎・横浜など神奈川県、その他オンライン法律相談により全国各地からご相談頂いております。

電話受付時間:月~土(祝日を除く)10時~18時
メール受付時間:24時間365日受付中

※三鷹武蔵野オフィスは土曜日は予約受付のみ対応しております。土曜日の相談をご希望の方は、調布オフィスをご利用ください。
※平日18時以降(19時スタートがラスト)の相談も可能です(事前予約制・有料相談のみとなっております)。
※メールでのお問い合わせについては、通常1~2営業日以内に返信いたします。お急ぎの方は電話でお問い合わせください。

調布
オフィス
042-444-7160
三鷹武蔵野
オフィス
0422-24-9855

ご相談
フォーム