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Q. 遺留分を請求する期限とは? 遺留分侵害額請求権や遺留分に相当する金銭の請求権の時効について解説

2024年9月15日更新

相続争い

【この記事の内容】

・遺留分とは
・遺留分侵害額請求と時効

・遺留分に相当する金銭請求権と時効

遺留分を請求する期限として消滅時効があります。消滅時効が完成してしまうと遺留分を請求することができなくなってしまうため注意が必要です。遺留分を請求する期限について理解するには、遺留分を請求する際には遺留分侵害額請求権と、遺留分侵害額請求権を行使したことにより発生する遺留分に相当する金銭請求権という2つの権利が登場することがポイントになります。そこで、この記事では主に遺留分を請求する期限(時効)について、遺留分侵害額請求権と遺留分に相当する金銭請求権に分けて解説いたします。

(関連記事)「Q. 遺留分を渡さなくていい方法?遺留分対策について8つの具体的方法を弁護士が解説

遺留分とは

遺留分制度は、亡くなった方の兄妹姉妹以外の相続人が遺言や一定の生前贈与によって処分された財産の一部を金銭という形で取り戻すことができる制度です。相続財産(遺産)を少ししか承継できない内容の遺言書があるケース(例えば相続財産のほとんどを占める自宅を長男に相続させる遺言書があるケース)や生前の贈与によって相続財産が大きく減ってしまっているケース等で遺留分が問題になります。

2つの権利についてそれぞれ別々に時効が問題になる

遺留分制度には遺留分侵害額請求権と、遺留分侵害額請求権を行使したことにより発生する遺留分に相当する金銭請求権という異なる権利があります。異なる権利であるため、それぞれ別々に時効が問題になるという点が遺留分と時効を理解する重要なポイントになります。まずは遺留分侵害額請求権と時効について見ていきましょう。

遺留分侵害額請求権と時効

遺留分侵害額請求権は、行使する(正確には「遺留分侵害額請求権を行使する意思表示」と言います)ことで遺留分に相当する金銭請求権を生じさせることができる権利です。わかりにくい作りになっていますが、遺留分侵害額請求権の行使によって初めて具体的な権利が生じるようにすることで、具体的な権利を取得するかどうかを遺留分権利者が決めることができるようになっています。
遺留分侵害額請求権は以下の3点すべてを知った時から1年が経過すると時効によって消滅します。1年という期間は意外と短いため特に注意が必要です。

  • 被相続人が亡くなったこと
  • 贈与又は遺贈があったこと
  • その贈与又は遺贈が遺留分を侵害すること

そのため、以下のようなケースでは時効期間は開始しません。

  • 遺贈や贈与があったことを知らなかったとき
  • 遺贈や贈与があったことは知っていたが相続財産の額がわからず遺留分が侵害されていることは知らなかったとき

もっとも、被相続人が亡くなってから1年が経過すると、遺留分侵害額請求権の時効について争いになる可能性が高まります。遺留分が侵害されているか否か正確に判断できない場合でも可能性がある場合には、被相続人が亡くなってから1年以内に遺留分侵害額請求権の行使をしておくとよいでしょう。

また、遺留分侵害額請求権は被相続人が亡くなってから10年が経過(除斥期間といいます)することでも消滅します。被相続人が亡くなってから10年が経過すると、被相続人が亡くなったこと等を知らなかったとしても遺留分侵害額請求権を行使することが原則としてできなくなってしまいます。

遺留分侵害額請求権の時効への対処方法

遺留分侵害額請求権を行使した後は、遺留分侵害額請求権そのものについての時効は問題になりません。時効が完成する前に遺留分を侵害している者に対して遺留分侵害額請求権を行使することが重要です。遺留分侵害額請求権の行使は口頭でも書面でも可能ですが、口頭では証拠が残らずトラブルの原因になります。そのため、実務上は配達証明付き内容証明郵便を用いて遺留分侵害額請求権を行使します。なお、遺留分侵害額請求権を行使するには請求相手の特定が必要です。そのため、遺留分を侵害している贈与や遺贈を受け取った方を特定できる程度に相続人や遺言書の内容、相続財産等を調査する必要があります。

【応用編】

遺留分を侵害する贈与や遺贈の無効を主張する場合には遺留分侵害額請求権を行使しておく
贈与の無効を主張している人にとっては、遺留分を侵害する贈与の認識はなく、遺留分侵害額請求権の時効期間は開始しないとも考えられます。しかし、贈与の無効を主張していても、贈与が遺留分を侵害することを知っていたと判断され、実は時効期間が開始していたというケースもあるため注意が必要です。判例でも、相続財産のほとんど全部が贈与されていることを知っている場合には、贈与が無効であることを信じたことがもっともと認めることができる特段の事情がない限り、贈与が遺留分を侵害することを知っていたと推認するのが相当である旨の判断がなされています。そこで実務上は、贈与の無効を争う場合には、仮に贈与が有効だとしても遺留分侵害額請求権を行使する旨の配達証明付き内容証明郵便を送付しておき、遺留分侵害額請求権を行使しておくことが一般的です。なお、遺贈の無効を争う場合も同様です。

【応用編】

遺留分が侵害されている場合は遺産分割協議とともに遺留分侵害額請求権を行使しておく
遺産分割協議をする際に遺留分について協議することも可能です。ただし、遺産分割協議と遺留分侵害額請求権の行使は別の行為であるため、遺産分割協議の申し入れをしても原則として遺留分侵害額請求権を行使したことにならないため注意が必要です。遺留分が侵害されている場合は、遺産分割協議をするとともに遺留分侵害額請求権を行使する旨の配達証明付き内容証明郵便を送付しておきましょう。

【応用編】

改正前との違い(時効や行使方法)
令和元年7月1日の民法改正で遺留分制度が改正され、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変更されました。令和元年7月1日より前に亡くなった方の相続については、改正前の規定が適用されます。遺留分減殺請求権の性質は遺留分侵害額請求権とは異なる点には注意が必要ですが、遺留分減殺請求権の時効や行使方法は侵害額請求権と同様です。

遺留分に相当する金銭請求権と時効

遺留分侵害額請求権を行使したことによって発生した遺留分に相当する金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使してから5年間で時効によって消滅します。遺留分侵害額請求権を行使しているのに5年間放置することはあまりないと思いますが、具体的な金額の算定や、当事者間の話し合いに時間がかかってしまい支払を受ける前に5年を経過してしまうことがないように注意が必要です。

遺留分に相当する金銭請求権の時効への対処方法

実際に遺留分に相当する金銭請求権の支払いを受けるまで時効の問題が生じるため、支払いを受ける前に5年を経過してしまいそうな場合には対処が必要です。対処方法としては以下のようなものが考えられます。

  • 当事者間で合意し示談書を作成する
    当事者間の話し合いで合意できた場合には時効期間がリセットされ初めから開始されます。合意できたことを証拠に残すために実務上は示談書を作成します。
  • 調停を申し立てる
    調停中に時効は完成しません。調停で合意できた場合には時効期間が10年になり調停調書が作成された時点から時効期間が開始します。調停が不成立だった場合には調停不成立時に5年を経過していたとしても、不成立から半年を経過するまでは時効は完成しません。
  • 訴訟を提起する
    当事者間の話し合いや調停で解決できない場合には訴訟を提起することになります。訴訟中に時効は完成しません。判決が確定した場合には時効期間が10年になり判決確定時から時効期間が開始します。
  • 強制執行を申し立てる
    調停で合意できた・判決が確定したのに支払わない場合には強制執行を申し立てることができます。強制執行手続中は時効は完成せず、強制執行手続が終了すると、時効期間がリセットされ初めから開始されます。

遺留分に相当する金銭請求権に関する遅延損害金

遺留分侵害額請求権の行使をする時点では具体的な金額を明示する必要はありません。しかし、遺留分に相当する金銭を請求する権利の遅延損害金は具体的な金額を示して支払を求めた時点から発生すると考えられています。遅延損害金が軽視できない金額になることもあります。できる限り速やかに具体的な金額を示して支払を求めるようにしましょう。

【応用編】

改正前との違い(請求権を行使して生じる権利の時効)
令和元年7月1日より前に亡くなった方の相続については改正前の規定が適用されるため、遺留分侵害額請求権ではなく遺留分減殺請求権が問題になります。
遺留分減殺請求をした者は、所有権に基づく返還請求権や所有権移転登記請求権等を有することになりますが、所有権に基づく返還請求権や所有権移転登記請求権には時効がありません。一方で遺留分に相当する金銭請求権には時効があるため注意が必要です。

まとめ

以上、遺留分を請求する期限について解説いたしました。遺留分制度には遺留分侵害額請求権と、遺留分侵害額請求権を行使したことにより発生する遺留分に相当する金銭請求権の2つの権利があり、それぞれ別々に時効が問題となります。この点は複雑で理解が難しいにもかかわらず、遺留分侵害額請求権の時効は1年と短く速やかな対処が必要です。弁護士に相談することで適切な対処が速やかに可能になります。遺留分でお悩みの方は弁護士までご相談下さい。


【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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