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Q. 相続した借地上の建物と借地権(借地権付き建物)の売却その他の活用方法とは?

2024年7月6日更新

相続問題

【この記事の内容】

・借地権も相続できる
・借地権付き建物の活用方法
・承諾に代わる許可を求める申立て

借地上の建物と借地権を相続したものの、自分は使わないのでどうにかしたいというご相談を受けることがあります。この記事では借地上の建物と借地権の相続や活用方法について解説いたします。なお、借地権には、①建物の所有を目的とする土地の賃借権と、②建物の所有を目的とする地上権がありますが、ほとんどは②です。この記事では便宜上②のことを借地権と表記します。また、原則として、借地権と借地上の建物をまとめて「借地権付き建物」として解説いたします。

(関連記事)「遺産相続した不動産を分ける方法。土地建物を売却して現金で分割するなど4種類の遺産分割方法について解説。
(関連記事)「遺産分割における不動産の評価額や評価方法について解説

借地権も相続できる

借地上の建物と同様に借地権も相続できます。相続後は借地上の建物について名義変更をすることで、借地権を取得したことを第三者にも主張することができるようになります。名義変更を怠ると10万円以下の過料を科される可能性もあるため、借地上の建物の名義変更は必ず行いましょう。稀ですが借地権そのものが登記されている場合には借地権そのものの名義変更も必要です。


【応用編】
「借地権者一代限り」とする特約が有効であれば借地権を相続できません。被相続人が死亡した時点で借地権が消滅するためです。裁判例上、この特約は特段の事情がない限り無効とされていますが、必ず無効という訳ではありません。「借地権者一代限り」とする特約が付されていた場合には弁護士にご相談下さい。

税金面にも注意が必要

相続する際に借地権や借地上の建物の評価額が高額になるケースがあります。そのため、思わぬ相続税がかかったり、借地権付き建物を売却する際に譲渡所得税がかかることがあるため税金面にも注意が必要です。

借地権を相続する際に地主の承諾は必要か

借地権を相続すること自体については地主の承諾は不要です。ただし、遺産分割の方法によっては承諾が必要なケースもあるため、遺産分割をする際には注意が必要です。例えば、遺産分割によって相続人の一人が借地権を単独で取得する場合には地主の承諾は不要ですが、換価分割(借地権を第三者に売却し代金を分けること)の場合には地主の承諾が必要です。

借地権付き建物の活用方法

相続した借地権付き建物の活用方法には以下のような方法があります。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

  • 建物を取り壊し更地にして地主に返還
  • 地主以外に売却
  • 地主に売却
  • 地主から底地(借地権が設定されている土地)を購入した上で売却
  • 地主と協力して底地、借地権付き建物を同時に売却
  • 建物の賃貸
  • 等価交換

建物を取り壊し更地にして地主に返還

借地契約の合意解除等によって借地契約を終了させた上で、建物を取り壊して更地状態で地主に土地を返還する方法です。地主にとっては望ましいことが多く、地主との関係を悪くしたくない場合には、借主にとってもメリットがある方法でしょう。他方で、建物を取り壊して更地にする費用は特に取り決めがない限り借主の負担になります。地主に費用負担してもらうよう交渉することも考えられますが関係が悪化しないよう注意が必要です。

地主以外に借地権付き建物を売却

売却代金を取得できるというメリットがあります。もっとも、借主は土地の所有権を有していないため、土地の所有者が土地建物を売却する場合と比べて売却しづらく、売却できたとしても売却価格が安くなってしまうというデメリットがあります。また、借地権付き建物を地主以外に売却する場合には地主の承諾が必要になり、一般的には承諾料が必要になります。

地主に借地権付き建物を売却

地主が借地権を取得することにより、地主は借地権が付いていない土地を取得することになるため、地主自身が土地を使うことができるようになります。そのため、地主以外に売却するよりも高く売却できる可能性があるというメリットがあります。他方で、地主との交渉時にトラブルが起きると、地主以外に売却する際に承諾をしてもらいにくくなるといったデメリットが考えられます。

地主から底地を購入した上で売却

借主は、地主から底地を購入することで土地について完全な所有権を確保することができます。借地権付き建物の売却ではなく、土地建物の売却が可能になるため、売却しやすい上に売却価格も高くなりやすいというメリットがあります。また、地主以外に売却する際に地主の承諾が不要になります。他方で、底地を購入する資金が必要というデメリットがあります。

地主と協議して底地、借地権付き建物を同時に売却

地主が有する底地と、借主が有する借地権付き建物を同時に売却する方法です。

買主は、底地と借地権付き建物の両方を取得することで、土地建物について完全な所有権を取得できることになります。そのため、売却しやすい上に売却価格が高くなりやすいというメリットがあります。また、地主から底地を購入した上で売却する場合と比べて、底地を購入する資金が不要になるというメリットもあります。他方で、地主と協議することになるためスムーズに売却することが難しくなりやすいというデメリットもあります。

等価交換をして売却

借地権と底地を等価で交換してから売却する方法です。例えば8000万円の借地権と2000万円の底地を等価で交換する場合、8000万円分の土地を借主に、2000万円分の土地を地主にそれぞれ分割します。借主は等価交換で得た8000万円分の土地を売却することができるようになります。

借地権付き建物ではなく、土地・建物を売却することができるため、売却しやすい上に売却価格が高くなりやすい、売却時に地主の承諾が不要というメリットがあります。他方で、分割するため土地面積が小さくなってしまう、等価交換によって建ぺい率等の問題が生じ得る、税金面が複雑になりやすいといったデメリットがあります。土地が広い場合には等価交換も選択肢に入るでしょう。

建物の賃貸

借地上の建物を賃貸することも可能です。借地上の建物を賃貸する際に地主の承諾は必要ありません。ただし、借地上の建物の賃貸を禁止する特約を有効と認めた裁判例があるため、この特約がある場合には注意が必要です。

まとめ

以上、相続した借地権付き建物の活用方法について解説いたしました。不動産会社が関与している場合には不動産会社も交えて地主と交渉するとよいでしょう。

借地権を売却するには地主の承諾が必要

借地権を売却するには地主の承諾が必要です。地主の承諾を得なかった場合、売却したことを地主に主張することができません。また、地主の承諾なく売却し、借地を使用収益をさせた場合には、地主は賃貸借契約を解除することもできます。借地権の譲渡について背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは例外ですが、借地権を売却した場合に特段の事情が認められるケースは限定的です。

承諾を得る際に承諾料を支払うことが一般的

地主の承諾を得る際に承諾料を支払うことが通例です。承諾料の目安は借地権の価格の10%程度と言われています。しかし、適切な承諾料を提示しても地主が承諾するとは限りません。地主が承諾しない場合にはどうすれば良いでしょうか。

承諾に代わる許可を求める申立て

地主が承諾しない場合、借主は裁判所に承諾に代わる許可を求める申立てをすることが可能です。裁判所から許可を得られた場合には承諾を得た場合と同じように借地権付き建物を売却することができるようになります。

(1) 許可されるケースが多い

買主に借地権付き建物を売却しても地主に不利となるおそれがない場合、裁判所は一切の事情を考慮した上で許可を与えることができます。一般的には許可されることが多いでしょう。なお、不利となるおそれを基礎づける事情としては、例えば、買主に地代を支払う資力がない場合や、買主が反社会的勢力に属する場合などがあります。

(2) 承諾料

許可される場合にはほとんどのケースでは承諾料を支払うことになります。承諾料の中心的な水準は借地権価格の10%であり、個別事情に応じて上下することがあります。それでは借地権価格はどのように算出されるのでしょうか。承諾に代わる許可の手続きにおいて利用されることの多い借地権価格の計算式は以下の通りです。

【計算式】

借地権価格=更地価格×借地権割合

更地価格とは、評価対象土地に借地権がついておらず更地だった場合の価格のことです。更地価格を算出する方法は様々ですが、承諾に代わる許可の手続きでは取引事例比較法で算出されることが多いです。取引事例比較法はその名の通り、多数の取引事例を基礎に評価額を算定する方法です。評価対象土地と同じような条件の土地の価格を算出した上で評価対象土地の価格を算出します。ケースに応じて評価対象土地の個別的な事情等を考慮して価格を補正することもあります。

借地権割合とは、更地に対する借地権の価格の割合のことです。承諾に代わる許可の手続きにおける借地権割合は、国税庁が公表している相続税財産評価基準(路線価等)における借地権割合を参考にして判断されることが多いです。

(3) 和解や調停による解決

承諾に代わる許可を求める申立てについて、手続きの流れと裁判所がどのように裁判するのかについて解説いたしました。もっとも、実際には、裁判所が裁判をすることなく、当事者間の和解や調停によって解決することも多くあります。


【応用編】
裁判所が定める期間内であれば、地主は借地権付き建物を自分に売ることを求めることができます。この地主の権利を介入権といい、借地権の譲渡を阻止するための地主の対抗手段になります。地主が介入権を行使した場合、裁判所は原則として相当な対価を定めて譲渡を命ずる裁判をすることになります。借地権付き建物の相当な対価は一般的には以下の計算式で算出されます。

【計算式】
借地権価格-借地権譲渡承諾料-借家権価格+建物価格

介入権価格を算定する際の借地権価格は建付減価の有無や程度も考慮されて算出されます。また、建物が賃貸されておらず借家権価格が発生していないことや、建物が古い等の事情で経済的価値がないために建物価格が発生していないことも少なくありません。それどころか、建物の取り壊しを相当とする場合には取り壊し費用が控除されることになります。

なお、介入権を行使できない場合もあります。例えば、建物が借地と他の土地にまたがっている場合には裁判所には借地ではない土地上の建物部分を譲渡することを命じる権限がないため、介入権を行使することはできません。承諾料を増額する要素になり得るに留まります。また、借地権譲渡を承諾する旨の特約が付されていた場合には地主に対抗手段を認める必要がないため、介入権を行使することはできません。


まとめ

以上、相続した借地権付き建物を売却する方法について解説いたしました。相続手続きや売却は借地契約の内容を確認した上で行う必要があります。また、借地権を売却する際には地主の承諾が必要です。承諾が得られない場合には、承諾に代わる許可の申立てをすることも可能です。借地権付き建物にお悩みの方は弁護士までお気軽にご相談下さい。ケースによっては不動産業者のご紹介も可能です。


【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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