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Q. 任意後見制度の利用にかかる費用について解説

2024年月6月15日更新

高齢者と嫁

【この記事の内容】

・任意後見制度自体にかかる費用
・手続きを弁護士に依頼する場合の費用

任意後見制度を補完する他の制度を利用する場合の費用

認知症になり判断能力が衰えたときの対策として、任意後見制度の利用を検討しているものの、費用面がよくわからないという方もいらっしゃると思います。この記事では、多くの方が気になる任意後見の費用について解説いたします(令和6年4月現在)。なお、任意後見制度の概要については下記の関連記事をご確認下さい。

(関連記事)「Q. 任意後見制度とは 制度の概要や手続きの流れなどを解説

任意後見制度の利用にかかる費用

任意後見制度の利用にかかる費用には、大きく分けて、Ⓐ任意後見制度自体にかかる費用、Ⓑ手続きを弁護士に依頼する場合の費用、ⓒ任意後見制度を補完する他の制度を利用する場合の費用があります。まずは、Ⓐ任意後見制度自体にかかる費用を手続きの流れに沿って、①任意後見契約時の費用、②任意後見監督人選任申立て時の費用、③任意後見が開始してから終了するまでの費用の順番に解説いたします。

①任意後見契約時の費用

任意後見契約は公正証書で行う必要があるため、以下の費用を公証役場に支払う必要があります。なお、任意後見受任者が複数の場合は費用が加算されます。

【費用一覧】(令和6年4月現在の金額)

金額内容
公正証書作成基本料11,000円公証人が任意後見契約公正証書を作成する基本手数料
枚数加算公正証書の枚数が4枚を超えるときは1枚超えるごとに250円公正証書の枚数が4枚を超えるときに加算される手数料
正本・謄本の作成費用枚数×250円任意後見契約公正証書の正本・謄本の作成費用
委任者と任意後見受任者用に正本が2通、公証人が登記手続を嘱託するために謄本が1通必要です。
登記手数料2,600円任意後見契約の登記に必要な手数料
登記嘱託手数料 1,400円公証人が登記の嘱託をする手数料
書留郵便料 重量による任意後見契約公正証書の謄本を法務局に郵送する際の費用
出張費用(オプション)日当:1日→2万円 4時間以内→1万円
交通費:実費病床に出張した場合:5,500円
任意後見契約公正証書を作成する際に公証人に出張してもらう場合の費用

費用一覧だけではイメージをしにくいため、事例を用いて費用を計算してみましょう。

【任意後見契約公正証書の枚数が10枚の場合の費用】

任意後見契約公正証書の枚数が10枚の場合の費用は以下の通りです。

  • 公正証書作成基本料 11,000円
  • 枚数加算 1,500円(6枚×250円)
  • 正本・謄本の作成費用 7,500円(10枚×3通×250円)
  • 登記手数料 2,600円
  • 登記嘱託手数料 1,400円

上記合計 24,000円

なお、任意後見契約公正証書の謄本を郵送するための書留郵便料が別途必要です。

任意後見監督人選任申立費用

(1) 手続費用

委任者の判断能力が衰えて任意後見監督人の選任申立てを行う際の手続きにかかる費用は以下の通りです。

【費用一覧】(令和6年4月現在の金額)

金額内容
申立手数料800円
登記手数料1,400円
郵便切手代3,270円(東京家裁)郵便切手代は裁判所や郵便料金によって異なります。東京家裁における令和5年9月15日時点の郵便切手代は3,720円です。

鑑定費用(原則不要)10万~20万円程度申立手の際に添付する任意後見用の診断書により判断能力の低下を判断するため、多くのケースでは判断能力に関する鑑定は不要です。

なお、任意後見監督人選任審判時に手続費用は、申立人の負担ではなく、支援・保護を受ける対象である委任者の負担とする裁判をするのが東京家裁の運用です。申立人は任意後見監督人の選任後に任意後見人に対し手続費用の償還を請求することができます。

(2) 添付資料の収集費用

申立ての際に必要な添付資料を郵送で収集する際の費用は以下の通りです。別途郵送料も必要です。

【費用一覧】(令和6年4月現在の金額)

金額内容
診断書作成料数千円~数万円(病院による)成年後見制度用の診断書作成料
委任者の本人情報シート作成料福祉関係者に問合せ委任者を支援している福祉関係者が委任者の生活状況等に関する情報を記載するシートの作成料
委任者の戸籍個人事項証明書450円
委任者の住民票300~400円程度(自治体による)
任意後見受任者の住民票300~400円程度(自治体による)
登記事項証明書(任意後見)1通550円
委任者が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書1通300円法定後見を受けていないことの証明書の発行手数料
不動産の全部事項証明書(不動産がある場合)1通600円委任者の財産に不動産がある場合には全部事項証明書が必要

任意後見のスタートから終了まで

任意後見監督人が選任されると任意後見の効力が生じ、任意後見人による支援・保護がスタートします。任意後見人による支援・保護がスタートすることで、任意後見人や後見監督人の報酬が発生します。

(1) 任意後見人の報酬

ア 任意後見人が専門職の場合

任意後見人の報酬は契約で自由に定めることができますが、家庭裁判所が公表している法定後見における専門職の成年後見人の報酬額の目安が参考になります。

【専門職の成年後見人の報酬の目安】(令和6年4月現在の金額)

金額内容
基本報酬預貯金や有価証券などの流動資産の合計額が1000万円以下→月額2万円

流動資産の合計額が1000万円を超え5000万円以下→月額3万~4万円

流動資産の合計額が5000万円を超える→月額5万~6万円

後見事務に特別困難な事情があった場合には基本報酬額が最大50%増加
通常の後見事務を行った場合の報酬
特別の行為をした場合の報酬相当額の報酬が付加されることがある成年後見人が特別の行為をした場合の報酬
後見人が複数の場合分掌事務の内容に応じて報酬額を按分

イ 任意後見人が親族の場合

任意後見人が親族の場合は専門職の場合と比べて報酬を少な目にしたり、無報酬にしたりすることもあります。しかし、任意後見人の業務は簡単なものではありません。責任感を持って業務を行ってもらうためにある程度の報酬を定めておく方法もあります。

(2) 任意後見監督人の報酬

任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決定します。任意後見監督人の報酬の目安は、専門職の成年後見人と同様ですが、基本報酬額が異なります。任意後見監督人の基本報酬額の目安は以下の通りです。

  • 流動資産の合計額が5000万円以下の場合→月額1万から2万円
  • 5000万円を超える場合→月額2万5000円から3万円

(3) 任意後見人の後見事務や任意後見監督人の職務に関する費用

交通費などの任意後見人の後見事務に関する費用や任意後見監督人の職務に関する費用は委任者の負担になります。

手続きを弁護士に依頼する場合の費用

任意後見契約書案の作成や、任意後見監督人選任申立ての代理人を弁護士に依頼する場合、弁護士の報酬が発生します。弁護士や事案ごとに報酬の金額も異なります。例えば、任意後見契約の内容をどの程度検討するのか、委任者の希望を示すライフプランの作成についてもサポートするのかといった点で報酬が異なる可能性があります。専門家を選ぶ際には報酬額だけでなく何をどこまでやってくれるのかといった点も確認した上で決めると良いでしょう。

任意後見制度を補完する制度

財産管理等委任契約や死後事務委任契約といった任意後見制度制度を補完する制度を利用する場合には別途費用が必要になります。

まとめ

以上、任意後見制度の利用にかかる費用について解説いたしました。任意後見の内容を十分に検討するには判断能力がしっかりしている必要がある上、時間もかかります。任意後見制度に興味がある方は弁護士へお早めにご相談ください。

任意後見に関する相談をご希望の方は、「取扱業務 任意後見人」のページもご覧ください。

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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