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Q. 任意後見制度と家族信託の違いとは? どちらを選ぶべきか違いを比較

2024年6月15日更新

高齢者

【この記事の内容】

・任意後見と家族信託の違い
・任意後見と家族信託の併用について

任意後見は認知症などで判断能力が不十分になる前に、判断能力が不十分になった後の支援や保護の内容をあらかじめ契約で決めておき、判断能力が不十分になった後に支援や保護をスタートする制度です。他方で、家族信託は委託者が受託者である親族に対して信託する財産を譲渡し、信託の目的のためにその財産の運用を任せる制度です。

任意後見と家族信託には、①認知症等によって財産管理ができなくなってしまうことへの対策になる、②利用には契約内容を理解する判断能力が必要、③本人が管理する財産の範囲や管理を任せる人を決めることができるといった共通点がある一方で、様々な違いもあります。

任意後見や家族信託の利用を検討する際には違いを把握しておく必要があります。そこで、この記事では任意後見と家族信託の違いについて解説いたします。

家族信託は信託する財産の権利が受託者に移転する

任意後見は、本人の代わりに財産の管理を行う制度であり、財産の権利は委任者が有したままです。他方で、家族信託では、委託者が受託者に信託する財産を譲渡するため、信託した財産の権利が委託者から受託者に移転します。信託した財産は受託者の固有財産とは別に管理され、信託の目的に従って運用することになります。

信託した財産の権利が委託者から受託者に移転することで任意後見と家族信託にはどのような違いが生まれるのでしょうか?

家族信託では、委託者の判断能力が低下し、委託者が自分に不利益な契約を締結してしまっても、信託した財産の権利は受託者に移転しているため、失うことはありません。一度財産を失ってしまうと取り返すことができないことも多く、仮に取り返すことができたとしてもコストがかかってしまうため、信託した財産の権利を失わないことは大きなメリットです。

ただし、委託者から受託者に権利を移転できない場合は信託することができません。例えば、委託者の年金受給権は委託者のみの権利であり、委託者から受託者に年金受給権を移転することができないため、年金受給権自体を信託することはできません。また、住宅ローンのついた不動産は金融機関の承諾を得ないと信託できません。信託する財産の権利が受託者に移転することには信託した財産の権利を失わないというメリットがある一方で、財産の種類によっては信託することができないものがあることには注意が必要です。

任意後見は財産管理だけでなく生活や療養看護の支援や保護も任せることができる

家族信託は、家族に財産の管理や運用を任せる制度であり、生活や療養看護の支援や保護を行う制度ではありません。他方で、任意後見は、生活や療養看護の支援や保護を行うために財産の管理を行う制度です。そのため、任意後見では財産管理だけでなく、生活や療養看護の支援や保護を任せることができます。

積極的な財産の運用は家族信託の方が適している

家族信託は信託の目的のために財産の運用をすることを目的とする制度ですが、任意後見は委任者の生活や療養看護の支援や保護を行うことを目的とする制度です。そのため、積極的な財産の運用は任意後見ではなく信託の方が適しています。

家族信託は自分以外のために財産を活用することができる

任意後見は、委任者のために委任者の財産を管理する制度ですが、家族信託は受益者のために財産を活用する制度であり、委託者以外の方を受益者に指定することもできます。したがって信託では自分以外のために財産を活用することもできます。なお、任意後見でも委任者の財産から扶養家族の生活費を支出することは可能です。

任意後見は裁判所による間接的な監督がなされる

任意後見による支援・保護がスタートする際には必ず家庭裁判所によって任意後見監督人が選任され、任意後見監督人を通じて裁判所による間接的な監督がなされます。他方で家族信託では裁判所による監督はありません。

効力発生時期が違う

任意後見契約は、任意後見監督人が選任された時点で効力が生じます。他方で、家族信託の効力発生時期は原則として契約締結時です。任意後見は判断能力が低下した場合に備えるための制度であり、判断能力が低下した後に任意後見監督人が選任されてはじめて効力が生じるため注意が必要です。

弁護士は基本的に家族信託の受託者になれない

弁護士が業として受託者になると信託業法違反になる可能性があります。そのため、弁護士は基本的に家族信託の受託者になれません。他方で、弁護士が任意後見人になることは可能です。

家族信託は委託者の死後に利益を受ける人を決めておくことができる

任意後見では、委任者が死亡すると任意後見が終了します。他方で、家族信託では委託者が死亡した後に財産を活用して得た利益を受ける人を決めておくことができます。例えば、委託者を第一次受益者、委託者が死亡した場合の第二次受益者を委託者の妻とすることで、妻が財産を運用することによる利益を受けることができます。このように、信託に遺言のような機能を持たせることができます。ただし、信託する財産以外について死後の承継先を決めておきたい場合には遺言等を用いる必要があります。

費用

任意後見では、①任意後見契約、②任意後見監督人選任申立て、③任意後見人や任意後見監督人の報酬に費用がかかります。任意後見契約や任意後見監督人選任申立ての際に専門家のサポートを依頼した場合には専門家の報酬も必要です。任意後見の費用について詳しく知りたい方は下記の記事をご確認ください。

(関連記事)「Q. 任意後見制度の利用にかかる費用について解説

他方で、家族信託では、①信託契約書の作成費用、②登記費用、③受託者の報酬を定める場合のその報酬が必要です。信託監督人等を設置した場合には信託監督人の報酬も必要です。

違いの一覧

任意後見家族信託
制度の目的契約で定めた範囲の療養看護及び財産の管理、処分など信託の目的に従った財産の管理、処分など
権利の移転任意後見人に財産の権利は移転しない。受託者に信託した財産の権利が移転する。
権限契約で定めた範囲の療養看護及び財産の管理、処分など信託した財産の管理、処分など
裁判所による監督任意後見監督人を通じた間接的な監督なし
効力発生時期任意後見監督人選任時原則として契約締結時
弁護士が任意後見人や受託者になることができるか任意後見人になることができる。基本的に受託者になることはできない。
財産の承継先を決めることができるかできない。受益者の定めによって実質的な財産の承継先を決めることができる。帰属権利者の指定によって信託が終了した後の財産の承継先を決めることができる。
費用①任意後見契約、②任意後見監督人選任申立て、③任意後見人や任意後見監督人の報酬①信託契約書の作成費用、②登記費用、③受託者の報酬

任意後見と家族信託は併用することも可能

任意後見と家族信託は併用することも可能です。例えば、積極的な財産の運用と生活や療養看護の支援や保護を希望する場合を考えてみると、積極的な財産の運用は任意後見ではなく家族信託が適している一方で、生活や療養看護の支援や保護は家族信託ではできません。そのため、積極的な運用をしたい財産については家族信託、その他の財産や生活や療養看護の支援や保護については任意後見を利用することが考えられます。

ただし、併用するとその分費用がかかるため注意が必要です。また、任意後見人と家族信託の受託者が同一の場合、任意後見人としての職務を果たすことが難しくなります。任意後見人は本人に代わって受託者に問題がないか確認する立場にありますが、任意後見人と受託者が同一だと、確認する人と確認される人が同一になってしまうためです。このような場合にはそれぞれ別の人を選任する、信託監督人を選任するなどの方法があります。

まとめ

以上、任意後見と家族信託の違いについて解説いたしました。どちらの制度を利用するか検討する際にはそれぞれの違いを踏まえる必要があります。また、両制度は併用することも可能です。例えば、収益物件については家族信託を利用し、その他の財産と生活、療養看護の支援・保護については任意後見を利用するといったことも可能です。また、ニーズによっては遺言などの他の制度も利用すべき場合もあります。ケースに応じた適切な方法を利用するには専門家のサポートが必要です。任意後見や家族信託に興味がある方はお気軽に弁護士にご相談ください。

※任意後見に関する相談をご希望の方は、「取扱業務 任意後見人」をご覧ください。

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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