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Q. 遺産相続した不動産を分ける方法。土地建物を売却して現金で分ける換価分割など4種類の遺産分割方法について解説。

2024年3月20日更新

家

【この記事の内容】

・遺産分割方法の種類と概要
・遺産分割方法について合意できなかった場合の流れ
・遺産分割方法について話し合う流れや留意点


遺産の適切な分割方法はケースによって異なります。特に土地建物など不動産は適切に分割することが難しいケースも多く、遺産分割協議をスムーズに進める上で分割方法について知ることが重要です。この記事では不動産の分け方について解説します。

相続した不動産(土地建物)の遺産分割方法は4種類

遺産相続した財産の分割方法には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4種類があります。この4つの分割方法は、不動産(土地建物)に限った分割方法ではありませんが、相続分に従って容易に分けることが可能な預貯金等の金融資産と異なり、不動産は物理的に分けることが難しく争いになりやすいため、以下では、土地建物を分割するケースを用いてそれぞれの分割方法がどういったものか解説いたします。

分割方法その1 現物分割(分筆登記・区分所有登記)

遺産そのものを分ける方法のことを現物分割といいます。例えば、1つの土地を分筆したり、1つの建物を区分所有化(※)して、複数の不動産にして分けた上で、相続人ごとに取得する方法です。

※区分所有とは、例えば1つの建物を部屋ごと所有することを言います。1つの建物を複数の区分建物として登記することになります。

分筆や区分所有には、後ほど述べる通りデメリットがあり、他の分割方法と比べて使われることは少ない状況です。

(1) 土地の分筆による現物分割

土地の分筆による現物分割には、例えば、〇〇県〇〇市〇〇1丁目1番の土地を、1丁目1番1と1丁目1番2の土地に分け、1丁目1番1の土地を相続人A、1丁目1番2の土地を相続人Bに分けるといったケースがあります。

土地の現物分割のメリット

  • 分筆後の土地という形ではあるが、それぞれの相続人に土地そのものを残すことができる。

土地の現物分割のデメリット

  • 測量や登記に手間や費用がかかる。
  • 分筆した結果、接道義務を満たさない、建蔽率・容積率に問題があるなど建物の建築が出来ない場合には、分筆後の土地の価値が著しく低くなるリスクがある(現物分割を合意する前に不動産の専門家に相談することが必要)。

(2) 建物の区分所有化

建物を区分所有建物にして分ける方法です。例えばアパートの各部屋を区分所有建物にして、各部屋を各相続人に分けるような場合です。

建物の現物分割のメリット

  • 区分所有という形ではあるが、建物そのものをそれぞれの相続人に残すことができる。

建物の現物分割のデメリット

  • 区分所有建物にするには各区分の構造上・利用上の独立性や敷地利用権の設定が必要となり、そもそも区分所有建物にできないケースが多い。
  • 区分所有建物にすると権利関係が複雑になる。
  • 相続人間の関係が悪いと共用部分の管理に支障がある。
  • 登記に手間や費用がかかる。

分割方法その2 代償分割(代償金の支払い)

相続人のうちの誰かが遺産を取得し、その代わりに他の相続人に代償金を支払う方法のことを代償分割といいます。例えば、一億円の土地を相続人Aと相続人Bで2分の1ずつ分ける場合に、Aが土地を取得し、AがBに代償金5000万円を支払うといったケースです。

不動産の場合、土地や建物を細分化したり、売却せずに済むこともあり、代償分割はよく使われている方法です。

不動産の代償分割のメリット

  • 不動産をそのまま残すことができる。
  • 手間が少ない。

遺産相続した不動産をそのまま残すことができることは、そのままの不動産が必要な人にとっては大きなメリットになります。また、分筆や区分所有をして現物分割する場合と違って、分割することで経済的価値が低くなるリスクもありません。

不動産の代償分割のデメリット

  • 取得する人に代償金を支払う資力が必要。
  • 代償金が支払われないリスクがあるため、資力を十分に確認する必要がある。
  • 代償金を計算するために不動産の評価額を決める必要がある。

分割方法その3 換価分割(不動産を売却して現金で分配する手続き)

不動産を任意売却や競売をした上で、売却代金を分ける方法のことを換価分割といいます。

換価分割には、①任意売却、②期限までに売却できなかった場合は競売するという条件での任意売却、③競売の3種類があります。遺産分割協議の段階では、①の任意売却しか使えません。調停では②が使われることが多いです。審判では③の競売が使われることがほとんどです。

不動産の換価分割のメリット

  • 現金を分割するため公平に分けやすい。

不動産の換価分割のデメリット

  • 売却や競売に手間や費用がかかる。
  • 不動産を手放すことになる。

分割方法その4 共有分割

不動産を共有して分ける方法のことを共有分割といいます。例えば、土地を相続人Aと相続人Bで2分の1ずつ共有して分けるといった方法です。共有状態を継続することになるため、相続人間の関係性が悪い場合には不動産の管理や処分に関して意見の対立が生じ、トラブルになる可能性があります。問題の先送りであり、特に次の世代に問題を押し付けることになり兼ねません。あくまでも例外的に選択する方法と考えるべきでしょう。

不動産の共有分割のメリット

  • 共有分割自体の手間や費用は少ない。

不動産の共有分割のデメリット

  • 権利関係が複雑になりやすい。
    例えば、共有分割をした後に共有者の一人が死亡し相続が開始すると、共有持分を新たな相続人が共有することになり、権利関係が複雑になります。
  • 共有している不動産の変更や管理に制限がある。

遺産分割における相続税などの税務上の注意点

分割方法によって、相続税や譲渡所得税などの税金が変わってくる場合があります。分割方法を選ぶ際には税金も考慮して検討する必要があります。もっとも、節税に意識が行き過ぎて不適切な分割方法を選択すると本末転倒になってしまうため注意が必要です。

相続人間の協議で遺産分割について合意できる場合

分割方法について合意できる場合は、どの分割方法を使っても構いません。審判になった場合でも、基本的には合意した分割方法が採用されます。とはいえ、適切ではない分割方法を選択すると不利益が生じるリスクがあるため、合意する際には将来的な不動産の活用方法や税金にも配慮した上で分割方法が適切か慎重に判断すべきでしょう。

相続人間で分割方法について合意できなかった場合(トラブルになった場合)

合意できなかった場合は、裁判所が審判で分割方法を決めます。裁判所の分割方法の決め方については、民法906条で以下の通りに定められています。

(遺産の分割の基準)
民法906条
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

裁判所は906条に従い、各相続人の事情を踏まえて実質的に公平な分割方法を決めます。遺産分割審判の実務上は、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順にそれぞれのメリットやデメリットを踏まえて分割方法を検討することになります。

遺産の分割方法について話し合う方法

遺産の分割方法について話し合う際の一般的な流れは以下の通りです。

①各当事者が分割方法について主張

まずは各当事者が適切な分割方法について主張します。お互いの希望を踏まえた適切な分割方法を主張すると、話がまとまりやすくなります。

②主張を踏まえて分割方法の合意を目指して話し合い

話し合いをする際には、合意できず審判になった場合はどういった分割方法が採用されそうかという点を踏まえると良いでしょう。審判で採用される分割方法はケースバイケースであるため、どういった分割方法が採用されそうか判断するには専門的知見が必要です。遺産分割について弁護士に依頼するメリットの一つといえます。

まとめ

  • よく使われる分割方法は代償分割や換価分割だが、適切な分割方法はケースにより異なる
  • 税金を意識しすぎて不適切な分割方法を選んでしまわないよう注意が必要
  • 分割方法について話し合う際には、お互いの希望や審判で採用されそうな分割方法を踏まえると建設的な話し合いができる。
※遺産分割に関する相談をご希望の方は、「遺産分割協議・調停・審判」をご覧ください。

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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