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Q. 秘密証書遺言とは?公正証書遺言との違いやメリット・デメリットについて解説

2023年9月28日更新

秘密証書遺言

秘密証書遺言の作成件数は、ある文献によれば年間110件程度と言われており、実務ではほとんど利用されていません。また、令和2年7月10日から秘密証書遺言より安価な自筆証書遺言保管制度が開始したことにより、ますます秘密証書遺言を選択すべきケースが減りました。

秘密証書遺言を選択すべきケースはほとんどありませんが、秘密証書遺言のことを知ることで他の方式の遺言のメリットやデメリットについて知ることができます。

秘密証書遺言とは?

公正証書遺言では作成時に証人2名と公証人に遺言内容を知られてしまいます。また、自筆証書遺言は遺言者が自ら作成するだけの遺言書であるため、本人が作成した遺言書が封入されている事が公証されることはありません。これに対し、秘密証書遺言は、遺言内容を誰にも知られずに作成することができ、また、遺言者本人が作成した遺言書が封入されている事が公証される遺言であることに特徴があります。

秘密証書遺言のメリットとは?パソコン(ワープロ)でも作成可能!?

秘密証書遺言のメリットは以下の通りです。

・遺言内容を秘密にできる

秘密証書遺言は、遺言内容を誰にも知られることなく作成することができます。また、封印をするため遺言者が秘密証書遺言を保管している間に遺言内容を知られるリスクは低いといえます。

・公正証書遺言よりも費用が安い

秘密証書遺言の手数料は1万1,000円と公正証書遺言よりも安価です。なお、秘密証書遺言や公正証書遺言では証人を公証役場に手配してもらう場合は謝礼が必要です。

・パソコンやワープロでの作成や第三者による作成も可能

ただし、署名は遺言者の自書が必要です。なお、遺言者が手書きで作成した場合は、万が一、秘密証書遺言の方式に違反して秘密証書遺言が無効になったときでも、自筆証書遺言として有効になる可能性があるため、パソコンやワープロで作成したり、代書をしてもらうことがデメリットになる場合もあります。

秘密証書遺言のデメリットとは?遺言検認手続き不要?無効リスクは?

秘密証書遺言のデメリットは以下の通りです。

・公証役場で手続きが必要

自筆証書遺言と異なり、公証役場での手続きが必要で手間がかかります。

・証人2名の手配が必要

公証役場での手続きをするために証人2名の手配が必要です。①未成年者、②推定相続人、③遺贈を受ける者、④推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等は証人になることができません。証人になることができない者が証人になってしまった場合は、秘密証書遺言としては無効になってしまうため注意が必要です。公証役場で証人の紹介を受けることも可能です。

・公証人によるチェックがない

公証人による遺言内容などのチェックがないため、公正証書遺言と比べて遺言が無効になるリスクや争われるリスクが高くなります。

・紛失、破棄、隠匿、改ざんのリスクがある

公正証書遺言の場合は、公正証書遺言の原本が公証役場で保管され、自筆証書遺言保管制度を利用した場合は法務局で自筆証書遺言の原本が保管されるため紛失などのリスクがありません。それに対して、秘密証書遺言は、遺言者が自ら保管する必要があるため紛失のリスクがあります。また、封印されていますが破棄・隠匿・改ざんのリスクがないとはいえません。

・遺言書の検認手続きが必要

秘密証書遺言は、公正証書遺言と異なり、遺言の検認手続きが必要です。検認手続きは申立てから完了するまで約1か月以上かかるのが通常です。実際には、申立ての準備を考える、数ヵ月程度必要な場合もあります。スピーディーに相続手続きが出来ないというデメリットがあります。

秘密証書遺言・公正証書遺言・自筆証書遺言・自筆証書遺言保管制度の違い

それぞれの違いを以下の通り表にまとめました。

秘密証書遺言公正証書遺言自筆証書遺言(保管制度なし)自筆証書遺言(保管制度あり)
自書の要否署名は自書が必要原則として署名は自書が必要必要必要
証人2名2名不要不要
費用手数料:11,000円手数料:財産の価額に応じた額不要保管手数料:3,900円
保管方法遺言者が保管原本:公証役場が保管
正本及び謄本:遺言者が保管
遺言者が保管法務局が保管
遺言内容を知られるリスク作成時:無し
保管中:封印されているため低い
第三者に遺言内容の筆記をしてもらった場合には、第三者は知ることになる
作成時:公証人と証人2名が遺言内容を知ることになるが、基本的に相続人や親族には知られない
保管中:正本と謄本の保管方法次第でリスク有り
作成時:無し
保管中:保管方法次第でリスク有り
作成時:法務局の職員が遺言内容を知ることになるが、相続人や親族には知られない
保管中:無し
遺言が無効になるリスクや争われるリスク有り低い(公証人によるチェックがある)有り有り (ただし、方式の定めに関しては法務局職員がチェックする)
原本の紛失・破棄・隠匿・改ざんリスク有り無し有り無し
検認の要否必要不要 必要不要
死亡時の通知制度無し無し無し有り

秘密証書遺言の作成方法と費用について

秘密証書遺言の作成方法は以下の通りです。

【事前準備】

  • 書面に遺言内容を記載し、署名・押印をして遺言書を作成する。
  • 遺言書を封筒に入れ、押印に使用した印章で封印する。
  • 証人2名を手配する。
  • 公証人や証人2名と日程調整する。

【公証役場での手続】

  • 公証人と証人2名の前に封筒を提出
  • 自己の遺言書である旨と筆者の氏名及び住所を述べる(申述)
  • 公証人が封紙上に日付と申述を記載
  • 遺言者と証人二名が封紙に署名押印

秘密証書遺言をお勧めできない理由

秘密証書遺言には様々なデメリットがありますが、その中でも特に、遺言が無効になるリスクや争われるリスク、紛失・破棄・隠匿・改ざんのリスクは相続手続きへの影響が大きいため、秘密証書遺言はお勧めできません。

自筆証書遺言保管制度であれば紛失・破棄・隠匿・改ざんのリスクがありません。費用も3,900円と安価です。どうしても費用を抑えたい場合は、自筆証書遺言保管制度がお勧めです。また、公正証書遺言は、紛失・破棄・隠匿・改ざんのリスクはなく、遺言が無効になるリスクや争われるリスクは低くなります。そのため、秘密証書遺言より費用はかかりますが、公正証書遺言が最もお勧めです。保管中に遺言内容を知られるリスクについても正本や謄本を厳重に保管することで対応できます。

遺言書は簡単なようで難しい点が非常に多く、相続手続きへの影響も大きいです。相続トラブルを防止するためにも、遺言書を作成する際には弁護士に相談することを強くお勧めします。

※遺言書作成に関する相談をご希望の方はこちらのページをご覧ください。

【記事監修者】

弁護士法人しらと総合法律事務所・代表弁護士 白土文也 (しらとぶんや)  
第二東京弁護士会所属  中央大学法学部法律学科卒業

【代表弁護士白土文也の活動実績】
・相続弁護士基礎講座(弁護士向けセミナー)講師(レガシィクラウド動画配信)
・ベンナビ相続主催「相続生前対策オンラインセミナー」講師
・弁護士ドットコム主催「遺産相続に関する弁護士向けセミナー」登壇
その他、取材・講演多数
  
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